これまでの自分ならどんな感想を持っても自由だが、今周囲にいるのは全員竜人だ。「爬虫類には興味がない」とか「怖い」とか、失礼になりそうなことは当然言ってはならないし、もし血なまぐさい展開になっても目を逸らしてはいけない気がする。
──でも恐竜っていうくらいだから、恐怖心は持ってもいいのかな?
もしかしたら「怖い」は問題なく、むしろ褒め言葉になるのかもしれない。
どうなのかわからないが、とにかく失礼のないように……今傍にいる全員が竜人であることを忘れずに観戦しようと思った。
「お待たせしましたー」
買い物に行っていた緑木と黄山が戻ってきて、目の前のテーブルが賑やかになる。
日奈子と皇牙の前に置かれたのは、ホットドッグや焼きそば、サイコロステーキ、フライドポテト、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、恐竜の形のカステラ焼き、数種のドリンクだった。
「どれでも好きなの選んでね、足りなかったら買いに行くから」
「ありがとうございます。凄い、たくさん」
ぺこぺこと頭を下げる日奈子の隣で、皇牙は早速ホットドッグに食らいつく。
生餌四人衆の前にはカラフルなサラダやナッツ、ドライフルーツが置かれていた。
「竜人関係の施設には、必ずヴィーガンメニューがあるんだよ」
「そうなんですね」
「あ、そろそろ次のバトルが始まるよー」
俄かに音楽が大きくなり、試合前の選手紹介が始まる。
巨大ビジョンに大きく映しだされたのは、端正な顔をした九条綾人だった。
髪も目も黒いが、虹彩の色には少し赤みがある。
身体的な細かいプロフィールや、年齢、戦歴なども表示された。
身長も体格も皇牙と同じくらいではないかと思われる。
恐竜バトルはわかりやすく赤と青に分けられているようで、この試合での綾人は青、対戦相手が赤だった。
画面だけではなく音声でも紹介が入り、バトルフィールドが表示される。
桜の木が映しだされ、春らしいフィールドが選ばれたのだとわかった。
東京の桜はとうに終わっている。
中継は北海道からのものだった。
