「なんか、遠慮とかしてませんか? 私、必要でしたら頑張ります」
「本当に大丈夫だ。お前はそのままでいい」
「……そのままで?」
「ああ、ありのままでいい」
「──よ、よかった……もう、お肉が食べられなくなるのかと思いました」
「むしろ積極的に食べてくれ。人間は回復が遅いからな」
「はい」
ほっとした日奈子は、皇牙と一緒にVIPシートに腰掛ける。
目の前にガラスなどはなく、空間は大きく開けていた。
ここからはスタジアム全体を見渡すことができる。
どうやら試合が一つ終わったところのようで、数万人の観客の熱気が感じられた。
スタジアムの中央には、巨大ビジョンが鎮座している。
恐竜がこの場で戦うのかと思ったが、今日はそうではないらしい。
大型恐竜の場合、スタジアムではライブ上映をするだけで、バトルフィールドは別にあるのだとルナから聞いたことがあった。
それは砂漠であったり熱帯であったり岩場や水辺など、その時の企画によって違い、様々なバトルフィールドが登場するところがダイナ・リーグの醍醐味なのだとか──。
「今日戦うのはティラノサウルス・レックスの九条綾人、二十六歳。対戦相手も同じT・レックスで、戦闘力は互角くらいだ。よかったら綾人を応援してやってくれ」
「はい、皇牙さんの秘書なんですよね? もちろん応援します」
日奈子がファイティングポーズを取りながら言うと、隣に座った赤羽が「勝者には賞金三千万だって」と囁いてくる。
「三千万っ?」
「それでも安いんだよ、平日だしね。皇牙様クラスだと一億とかいくから」
「一億……っ、す、凄いんですね」
「金より名誉のほうが大事だけどな、綾人は俺以外には負けたくないと思う」
ふっと笑う皇牙の横で、日奈子は黙って息を呑む。
これから恐竜バトルが始まるのだと思うと、どういう顔で観たらいいのかわからなくなった。
