先ほどの皇牙のように少し興奮した顔で、書類を手にしている。
「アタヴィズムです、間違いありません」
男性医師はそう言って、皇牙に書類を手渡した。
それから日奈子のほうを向くと、「初めて見ましたよ」と嬉しそうに笑う。
日奈子は医師の言葉の意味がわからず、説明を求めて皇牙の顔を見た。
「アタヴィズム──わかりやすく言うと、先祖返りだ」
皇牙は今も興奮気味で、輝くような美貌に薄い笑みを浮かべている。
先祖返りという言葉の意味はさすがにわかっていたので、つまり自分の先祖に草食竜人がいるのだと理解したが……俄かには信じられなかった。
「私が、先祖返り、なんですか?」
「そうだ、遠い先祖に草食竜人がいる」
「……だから、人間なのに竜人の血の匂いがしたんですね?」
「そうだ、つまり君は竜人になれる」
「──え? 私、変身とかできませんけど」
「竜人だからといって誰もが恐竜に変容できるわけじゃない。一生人間の姿のままの竜人もたくさんいるんだ。まったく問題ない」
「……でも、人間ですよ……ごく普通の……」
「竜人遺伝子の検査で陽性が出た人間は、竜人になれる。この証明書を持って役所に行けば、今日にでもすぐ竜人としてのジーン・パスが発行されるんだ」
「ジーン・パス?」
「竜人である証明になるカードだ。今すぐ役所に行こう」
「……っ、今すぐですか?」
「今すぐだ」
皇牙の言葉に、生餌四人衆が「おおぉー」「凄い!」「日奈子ちゃんやったね!」「ピンクが入隊だ、凄い凄い!」と沸き上がる。
何が凄いのかよくわからない日奈子は、次の瞬間に皇牙の喜びの意味を察した。
「俺の生餌になってくれないか?」
まるでドラマの中で美形俳優がヒロインに向かってプロポーズでもするみたいに、皇牙は真剣な目をしている。
