恐竜王の花嫁


 皇牙が選んでくれた自分のことは、好きになれるから、これまで生きてきて、今の自分が一番好きだから、このまま真っ直ぐ突き進みたい。引き返したくない。他人の影響なんかで終わらせたくない。彼を好きな想いだけは、絶対負けない。
「貴女、生意気だわ」
 綾香の声はさらに低くなり、心の声は大きくなる。
『この平均点女! 食い殺してやりたい!』
 強い殺意は胃にがつんと来るけれど、日奈子は目を逸らさなかった。
 怖くても引かない。引いたら負けだ。
 何も言えない引っ込み思案な自分からは、もう卒業したい。
 皇牙が選んでくれた自分のことは好きだから、ちゃんと大切にしたいと思った。
「私、帰ります」
 日奈子はそれだけ言うと、鞄を手に背筋を正す。
 綾香の心の声はしばらくの間『殺してやる! 殺してやる!』と聞こえていたが、何も聞こえない振りをして個室をあとにした。