「お金がないのは私のせいじゃないでしょ! お父さんが不倫したりっ、お母さんがお金盗んでクビになったりするからいけないんじゃない! 最悪のとばっちりよ!」
「私はすぐに仕事見つけただけマシでしょ!? あんたもバイトくらいして自分の物は自分で買うとかしなさいよ! 家のことも全然やらないしっ、十八にもなってほんと役に立たない子ね!」
「うるさい! うるさいよ! 黙れ毒親!」
「なんですって、あんた割ったグラス自分で片付けなさいよ! 自分でやったことの責任は取りなさい! 絶対やってあげないからね!」
「うるさい! うるさいなぁ! もうっ!」
結衣花は頭をかき毟りながら、ローテーブルに置いていた華麗なうちわを目にする。
そこには『皇牙様』と派手な文字が入っていて、自分がこれまで皇牙に掛けてきた時間や想い、推し活に使った金額などを考えずにはいられなかった。
──私が……私が推してたのに! 私が先に見つけたのに! なんで、なんだってこんなことになるのよ! あのブスが皇牙様と婚約なんて……嘘よ、絶対嘘!
これは現実ではなく、夢なのだと思った。
自分は今、長くて苦しい夢を見ている最中なのだ。
きっと悪夢はもうすぐ覚める。これが現実だなんてあり得ない。
平凡な姉だけが幸せになるなんて、そんなことは絶対に認めたくなかった。
