手を離してくれてほっとしたが、今度は吸いつくような革の質感にびっくりする。
自分の汚れた手が気になって、慌てて手を引いた。
「あ、手を拭きたい感じ?」
「アスファルトに手をついちゃった?」
「手も怪我してたりする?」
訊いてきたのは華やか四人組のうち三人で、半ばパニックに陥っている日奈子には誰が何を言ったのかわからない。
赤髪の彼がウェットティッシュを箱ごと差しだしてくれたので、「すみません、ありがとうございます」と言って一枚引き抜いた。
「……えっと、手には怪我、ないです」
「よかった。女の子なのに傷痕が残ったりしたら大変」
赤髪の彼がそう言うと、隣に座った青髪の彼が「男の子でも大変です」と口を挟み、赤髪の彼は「はい、その通りです。すみませんー」と舌を出す。
その様子を見て、緑髪と黄髪の彼が笑っていた。
日奈子は自分の隣に座った皇牙の横顔をちらりと見て、すぐにうつむく。
なんだかとんでもないことになってしまったと、冷や汗が流れた。
外の景色はスモークガラス越しに淡く遮られていて、自分が日常から切り離されたことを実感する。
これはたぶん夢だ。
痛みはあるけれど夢に違いない。
「赤羽、救急箱出して」と皇牙が言う。
赤羽という苗字らしい赤髪の彼が、二つ返事で救急箱を出してきた。
皇牙は医療用の滅菌済みウェットティッシュのパウチを開け、日奈子に向ける。
「スカートと膝、触ってもいい?」と訊かれたので、日奈子は「これは夢なんだ」と思いながら「はい」と答えた。
あまりにも図々しい夢で、皇牙ファンのルナに対して申し訳なくなる。
結衣花に知られたら殺されるかもしれないとまで思ったが、夢なら従うしかない。
皇牙は「失礼」と言いながら日奈子のスカートを少しだけ捲り上げ、血が滴る膝にウェットティッシュを当てた。
ひんやりとして気持ちがいいくらいで、痛くはなかった。
ただ、思いのほかまともに血が出ていたので驚く。
