その先にいるのは、玲華でもなく、綾人でもない。
自分に向かって駆けてくるのがわかって、日奈子は泣いた。
声援と祈りが彼に届いた気がして、それが嬉しくて泣いてしまった。
「日奈子!」
目の前まで来た皇牙が、テーブルの向こうから手を伸ばしてくる。
ウエストをつかまれ、まるで子供のようにひょいっと持ち上げられた。
テーブルを跨いでフィールド側に出されるや否や、お姫様抱っこをされる。
日奈子はわけがわからず動揺したが、皇牙は血のついた顔で笑っていた。
「日奈子、恐竜王になったぞ!」
「……は、はい! おめでとうございます!」
「結婚を前提に、俺と付き合ってくれ」
「──っ、えっ……?」
「婚約するってことだ。恐竜王の花嫁になってくれ」
クルーザーのフライブリッジで夕日をバックに告げられたことを、また言われる。
しかも今回は「婚約」という言葉を追加された。
日奈子は再び耳を疑ったが、どう考えてもプロポーズの言葉としか思えない。
蓼食う虫も好き好きだと思いながら、どうにか自分を納得させた。
返事はもう決まっている。ノーなんて絶対にあり得ない。
「はい」
言いたいことはたくさんあった。「本当に私でいいんですか?」「本当に結婚する気なんですか?」「そもそも皇牙さんは私のこと好きなんですか?」「私なんかのどこが気に入ったんですか?」と訊けるものなら全部訊きたいけれど、今は「はい」としか言えない。
初めて好きになった人から、花嫁にと望まれた喜びで胸がいっぱいで、身のほどを考えずに笑ってしまった。
遠慮も疑問も、今はまったく形にならない。
「皇牙さん」
勝ったらキスをしてくれと言われていたので、日奈子は皇牙の首に手を回す。
