それを観ていた玲華が、「嘘でしょ?」と声を漏らした。
「いつまでも子供じゃないんですよ、皇牙様は」
綾人が玲華に向かって言い、興奮を隠せないように「皇牙様、その意気です!」と叫ぶ。
日奈子も一緒になって「皇牙さん! 頑張って!」と声を張り上げた。
声援がどれだけ力になるかはわからないが、皇牙は念動力での攻撃をやめて、滝に向かって闘牛のように突進する。
大きな体のティラノサウルス・レックスとは思えない速さで走り、皇一郎の巨体に頭突き食らわせた。
皇一郎は血を吐きながら滝壺に沈み、やがて大きかった体が縮んでいく。
恐竜化を解いたのだ。
皇一郎は痛みと水攻めに耐えられなくなって、人間の姿に戻っていた。
日奈子は状況を把握するため、ライブ映像が映されている画面を確認する。
隣の席の玲華も画面を凝視していた。
そこに映されたのは、滝壺に浮かぶ皇一郎の……人間の姿の皇一郎の背中だった。
尻まで映された全裸の彼はじゃぶじゃぶと水をかき、滝壺から出るなりゼイゼイと息をする。
悔しさで歪めた顔のアップに切り替わり、カメラは容赦なく敗者の姿を映しだした。
「嫌だわ、みっともない負け方をして……離婚しようかしら」
玲華は苛立ちを隠さず吐き捨てると、豪華な指輪を嵌めた手で拳を握る。
それを振り上げたかと思うと、液晶画面に叩きつけて壊してしまった。
「皇牙さん!」
「皇牙様!」
画面は切り替わり、まだ恐竜の姿をした皇牙を映しだす。
彼は天に向かって勝利の雄叫びを上げ、空気をびりびりと揺らしていた。
画面がリプレイに切り替わるタイミングで、皇牙も恐竜化を解く。
シューシューと水蒸気を発しながら、瞬く間に人の姿に戻った。
控えていたスタッフが赤いガウンを持って駆けつけ、皇牙はそれに袖を通す。
あちこち怪我をしているようだったが、足取りはしっかりしていた。
ガウンの裾を翻しながら、皇牙が特別席に駆けよってくる。
