恐竜王の花嫁


 ──皇牙さん……頑張って、勝って!
 数分間の攻防が繰り返され、どちらも肩で息をする状態になっていた。
 皇一郎が大きく動き、皇牙の首に食らいつこうとする。
 皇牙は避けたが、疲労のせいか少しバランスを崩してしまった。
 その隙を突いて皇一郎の尾が飛んでくる。
 後肢を引っかけられた皇牙は、遂に転倒してしまった。
「皇牙さん!」
「皇牙様!」
「あらぁ、勝負ありかしら?」
 皇一郎は後肢を高く上げ、皇牙の体を踏み潰す。
 巨体を地面に縫いつけてから、首に咬みつこうとした。
 しかし皇牙も負けていない。
 転倒した状態から仰向けになり、後肢を二本揃えて皇一郎の腹を蹴った。
 その一撃で形勢は逆転し、皇一郎はよろよろと後方によろける。
 皇牙は鮮やかに立ち上がり、頭から突っ込んでいった。
「グハアァァァ──ッ!」
 絶叫したのは皇一郎だった。
 近くにあった滝目掛けて、皇一郎の体が吹っ飛ばされる。
 皇牙の血で汚れていた皇一郎の体が、滝の水でザァザァと洗い流された。
 皇牙が優れた身体能力でリードした形ではあるが、勝負がつくほどではない。
 日奈子は再び立ち上がり、「皇牙さん!」と声を限りに叫んだ。
 あと少しなのだ。おそらくあと少しで決定打に繋がる。
 皇牙も滝に向かって行き、牙による鍔迫り合いが始まった。
 水を浴びてもみくちゃになり、それぞれの動きがわからなくなる。
 しばらくすると滝の轟音を切り裂いて、皇一郎の巨体が水の外に出てきた。
 水飛沫を跳ね飛ばすその姿は、まさに絶望を形にしたような威圧感に満ちている。