「……あ、あの……っ、悪いのは私で、病院とかは、結構なので……っ、すみません、ありがとうございました」
「脚は平気? 歩けそう?」
「はい、平気です……あの、本当にすみませんでした」
つい凝視していた顔から視線を外し、日奈子はぺこぺこと頭を下げた。
しかし彼は鞄を渡してはくれず、「早く乗って。あやしい者じゃないから大丈夫」と言ってくる。
そうこうしているうちに、キャンピングカーのドアから一人、二人、三人、四人と、ぞろぞろ連なって人が出てきた。
全員同じ服の男性で、高校生か大学生くらいに見える。
髪の色は赤、青、緑、黄とそれぞれ違い、まるで四人組アイドルグループのように華やかな集団だ。
「皇牙様、大丈夫ですか?」
赤い髪の青年が皇牙に声を掛け、皇牙は「問題ない」と答える。
そして日奈子の手を引いて、開けっ放しのドアに向かった。
学生鞄を持ったままステップを上がり、「病院に行く」と運転手に伝える。
ほんとにいいです、大丈夫です──ともう一度遠慮しようとした日奈子だったが、引っ張られるままステップに足を掛けてしまった。
そのあとを華やか四人組がついてきて、日奈子を含む全員が車内に収まる。
ドアが自動で閉まり、車はすぐに発車した。
外の喧騒が嘘のように静まり返る。
足を踏み入れたそこは、さながら走る高級ホテルのスイートルームといった風情で、映画で見たことのあるキャンピングカーの車内とは比べものにならなかった。
まず目に飛び込んできたのは、奥まで続く磨き抜かれた大理石調のフロア。
天井には無数のファイバー照明が埋め込まれ、まるで星空のように淡い光を放っている。
中央に鎮座するのは、大人が数人寝られるほど大きな純白のL字型ソファーだ。
サイドテーブルにはシャンパングラスが並び、仄かにシトラスと高級なウッド系の香りが漂っている。
「座って。すぐに手当てするから」
皇牙に促され、日奈子はおずおずとソファーに腰を下ろした。
