恐竜王の花嫁


 この一週間、ダイナ・リーグ・ジャパンは緊急ドリームマッチの告知をテレビでもネットでも散々流していた。
 煽りに煽ったその日が、遂にやって来る。
 おそらく明日の今頃には勝負が決まっているだろう。
 先に人間に戻ったほうが負け。無様とされる裸の後ろ姿をカメラに捉えられるのはどちらなのか、考えるのがつらいので、いっそのこと明日に飛んでしまいたかった。
「日奈子、明日のことなんだが……頼みがある」
「はい」
「綾人と一緒に現地の特別席で観てほしい」
「──え? 現地、ですか?」
 いつも通り竜王スタジアムでライブ映像を観ると思っていた日奈子は、皇牙の思いがけない頼みに箸を止める。
 富裕層のみが集まるという特別席に、自分が座るなんて考えてもみなかった。
「もう誘拐されることはないと思うが、目の届くところにいてくれないと心配なんだ。それに明日は厳しい戦いになるから、日奈子が近くにいてくれると力になる」
「皇牙さん……」
 こんなふうに言われたら断れるはずもなく、日奈子は特別席に座る自分を想像した。
 スポンサー企業のトップやマニアックな富裕層が座る席に、自分のような一般人が座るなんて烏滸がましい。
 金額的にも相当高い席なのだろうし、申し訳ないと思う。
 しかし皇牙がそれを必要とするなら、やはり断ることはできなかった。
「わかりました。綾人さんと一緒に現地に行きます」
「よかった……明日のバトルフィールドはダイナ・リーグ・ジャパンが所有する無人島だ。俺のクルーザーで一緒に行こう」
「無人島、なんですか?」
「竜ヶ島という島だ。広大な平原や湿地、沼や滝があって、伸び伸びと戦える最高のバトルフィールドと言われている」
「雑誌で見た気がします。ジャングルっぽい感じの……」
「そう、それだ」
「ドリームマッチに相応しい場所が選ばれたんですね」
「思う存分やっていいってことだ」