「日奈子!」
帯ごとぎゅうっと抱き締められ、帰れるんだと思った。
皇牙のもとに、皆がいるあの寮に、自分は帰ることができるのだ。
「野蛮ねぇ」と玲華が呆れたように言い、皇一郎も「野蛮だなぁ」と苦笑いする。
皇牙は「その言葉、そのまま返す!」と怒鳴ると、真っ直ぐに廊下を走りだした。
「皇牙さん……っ、皇牙さん!」
「大丈夫か日奈子、走れるか!?」
「大丈夫です、走れます!」
「車を待たせてある!」
「はい!」
皇牙に手を引かれながら廊下を出ると、純和風建築の室内が見えてくる。
廊下がどこまでも続いていて、開放的な窓の外には日本庭園が広がっていた。
おそらく皇牙の実家なのだろう。複雑な迷路のようでもある廊下を、彼は迷いなく走っていく。
二人でドタドタと慌ただしく走りながら、日奈子は安堵のあまり涙を浮かべた。
泣いてたまるもんかと思う気持ちもあったけれど、皇牙がすぐに迎えにきてくれたことや、こうして一緒に帰れることが嬉しくて泣けてくる。
玄関に日奈子の靴はなかったので、皇牙に負ぶってもらって外に出た。
個人宅とは思えないほど広い駐車場に、皇牙のキャンピングカーが停まっている。
「皇牙様! 日奈子ちゃん!」
「日奈子ちゃん、無事!?」
「日奈子ちゃーん!」
「皇牙様やったー!」
車内からD4が次々に出てきて、両手を広げて迎えてくれた。
いつもの顔に囲まれてさらに安心した日奈子は、涙をこらえて笑う。
D4は、皇牙が来週皇一郎と戦う約束をしたことを知らないので、手放しで喜んでいた。
今はそれでいいと、日奈子は思った。
今はとにかく、無事に帰れることを喜びたい。
誘拐されてからどれくらい時間が経ったのかわからないが、新月に近い細い月が、闇色の空に浮かんでいた。
