恐竜王の花嫁


「でもそれが我が家のルールなんだもの」
「そういうことだ」
 悪びれない玲華と皇一郎を睨みながら、皇牙は首を横に振る。
 こんなことは絶対に受け入れられないという顔で、「日奈子を返せ」と凄んだ。
 座敷牢の格子越しに日奈子の手を握りながら、「今すぐ返せ」と要求する。
 怒りのあまり瞳の周りが普段より赤く燃えていて、凄みがあった。
 普通の竜人や人間なら、こんな皇牙の圧には勝てないだろう。
 けれども彼の両親はびくともしない。今も笑っている。
「──次の日曜日は、特別興行としよう」
「特別興行?」
 皇一郎の言葉に、皇牙は眉をぴくりと動かす。
 日奈子の手を一層強く握って、「俺と戦う気ですか?」と皇一郎に訊いた。
「如何にも」と皇一郎が答える。
 玲華は「あら素敵、竜王院親子のドリームマッチね」と手を叩いている。
 火花を散らす皇牙と皇一郎を交互に見ながら、日奈子はどうしてよいかわからずに皇牙の手を握り返した。
「皇牙さん……」
 危険な戦いはやめてほしいと、そう思った。
 しかし皇牙が負けるところなど想像できなかったし、負けることを想定して戦いを止めれば皇牙のプライドを傷つける。だからといって「どうか勝ってください」とも言いたくない。
 本意でないことは何もしてほしくない日奈子の気持ちを知ってか知らずか、皇牙は「受けて立とう」と明言した。
「決まりだな」と皇一郎が笑う。
 これでもう決まったのだ。
 次の日曜日、皇牙は皇一郎と戦う。
 公式戦で初めて戦って、父親との決着をつける。
「賞品はこのアタヴィズムのお嬢さんだ」
「当日まで私が預かるわね。女の私なら安心でしょ?」