夢の続きは君が描いて

それから、あっという間に月日が流れた。

「中村!お前は、こんなこともできないのか」

「すみません」

あたしは、高校を卒業して地元の企業に就職した。いつも怒られて、上司に頭を下げる毎日。

こんなの、望んでなかったのにな。

休憩の時間、あたしは弁当を食べながら、スマホを開いた。

ネットのトレンドに入っている名前をタップした。




#一ノ瀬ひより




そこには、ライブでキラキラの衣装を着て踊っているひよりの動画があった。


【ひより、マジで可愛い】

【ひよりんという逸材を見つけた事務所すごすぎる】

【ひよりちゃんに、ファンサ貰えた!】


弾ける笑顔を見せて、踊っているひよりはすごく輝いて見えた。二年たって、吹っ切れたのかな。とにかくあたしとは、住む世界が違う。

「…楽しそうじゃん」

向いてないとか言ってたくせに。

本当は、あたしがその世界にいるはずだったのに。

あたしはスマホの画面を消した。

弁当を食べ終わりコーヒーでも買おうと、自販機に寄ったとき、部署のテレビにひよりが映っているのが見えた。

「この子可愛いよなー」

「そうですね。まだ、十九歳なんですか!?」

「若いよね~」

さっきまで、あんなに怒っていた上司が顔をほころばせている。

あたしは、イライラしながら自販機のボタンを押した。

プルタブを開け、グッと飲む。口の中にコーヒーの苦味が広がった。

これから、どうしよう。

夢を諦めた日から、あたしはずっと心がモヤモヤしている。

何度目かわからないこの感覚は、きっと晴れることはない。

「はぁ」とため息をついたとき、スマホの通知が鳴った。




【一ノ瀬ひよりがブログを更新しました】




あたしは無料で見れるからと言い訳して、今でもひよりの公式ブログを読んでいた。

このブログでしか、今のひよりを知れないなんて、我ながら呆れる。

今日は主に、ライブのことやメンバーの子たちとの写真が綴られていた。

ブログにはたくさんのコメントがついていた。ひよりを応援している人は、もうたくさんいる。

ひよりは、あたしのこと覚えているのかな。

なんだか、胸がぎゅっとなって、あたしはブログを読むのをやめた。






*





「ただいま」

「おかえり、澪。ひよりちゃん出てるよ」

母がリビングのテレビを指さしながら言う。

「あっそ」

あたしは、ちらっとテレビに映るひよりを確認して、そのまま自分の部屋に向かった。

鞄を適当に置いて、スーツから部屋着に着替える。

食欲もなくて、そのままベッドに寝転がった。

あたしはずっと地元にいるのに、ひよりはもういない。

「はぁ」とまたため息が出る。

何回、こんなこと思うんだろう。

涙が頬を伝って落ちた。

静まり返った部屋には、時計の秒針の音だけが響いていた。

この先も、ずっとこんな毎日なのかな。

そんなことを考えていると、スマホの通知が鳴った。あたしは寝転がったまま、手に持っていたスマホを確認した。


【一ノ瀬ひよりがブログを更新しました】



また、更新?

ひよりは定期的に更新しているけど、一日に二回も更新したのは初めてだった。

どうしたんだろうと、あたしは起き上がってすぐにそのブログを開いた。