夢の続きは君が描いて

ひよりは、高校を転校して東京で活動を始めた。ろくに会話もないまま、ひよりはあっという間に遠い存在になった。

ひよりが東京に行くとき、あたしは見送りに行かなかった。風邪を引いたと嘘をついて、家に引きこもっていた。

ピコンと通知音が鳴る。

『澪ちゃん、行ってくるね』

その後すぐに、隣の家から声が聞こえた。

あたしは窓からこっそりとその様子を覗いた。

スーツケースをひくひよりは笑顔だった。あたしの部屋をちらっと見た後、ひよりは歩きだした。

カーテン越しに見ていたから、ひよりはきっとあたしには気づいていない。

歩いていくひよりの背中が、すごく羨ましかった。

あたしは、ひよりのメッセージに返信することができなかった。

何回もメッセージを送ろうとした。

『アイドルどう?』

『たまには帰ってきなよ』

『誕生日おめでとう!』

どれも送信できないまま、削除ボタンを押した。

ひよりはどんどん人気になっていった。でも、あたしにはなんとなくわかった。

きっとひよりは、無理してるだろうなって。

休日はずっと寝ているようなタイプだから、朝の番組に出ているときは、本当に辛そうだし。歌番組を見ても、一緒に練習していたときのひよりとはまるで違っていた。

作り物のような踊りに、ひきつった笑顔だった。

ひよりがいなくなった教室は、思ったよりも居心地が悪かった。くだらない会話をしていたあの頃に戻りたかった。

そんなあたしが学校に通い続けられたのは、やっぱりひよりの存在があったからだと思う。

ピコンと通知音が鳴る。


【一ノ瀬ひよりがブログを更新しました】


定期的に更新されるひよりのブログが、あたしの心の支えになっていた。

このブログを見ると、ひよりが傍にいるような感覚になる。

近況報告が書いてあると、思わずコメントをしてしまうくらいだった。

【本屋に行って、大好きなライトノベルの新刊買ったよ~】

【また買ったの?好きだね】

すぐに埋もれてしまうコメント。前だったら、「これ、面白いんだよ!澪ちゃんも読みな」とか言ってくれてたのに。

ひよりからの返信は来ない。

コメントは増えていって、あたしと同じようなコメントをしてる人も見つけた。

こいつ、ひよりの何を知ってるの。

なんだかイライラして、あたしはコメント欄を見るのをやめた。

そんな生活を、高校卒業までずっと続けていた。