仁太朗は少し照れくさそうに笑った。
珠那をからかう皮肉が混ざった時とは違う――昔と同じ飾り気のない笑みだった。
「ねえ、仁」
「何ですか?」
「私、仁が好きみたい」
挨拶をするように自然と告げることが出来た愛の告白。
緊張はしていても不思議と珠那は怖くなかった。
仁太朗にとっても予期せぬものだったらしく、ただ珠那を見つめたままでいる。
「昔は仁を弟みたいに思っていただけだったわ。でも、仁と再会して、今の仁を好きになっていったの」
珠那をからかって笑うところも、守護官の責務を全うする姿も、仁太朗のことばかりが珠那の心を占領して、惹かれて止まらなかった。
「理由があってもなくても仁に会いたいし、偶然の再会に頼るんじゃなくて、これから先の仁のことも知りたいって思ってる」
言い終えた時には恥ずかしくて珠那は身の置き所がなくなっていた。
耐えきれず、斜め下方へ傾けた視線。
地面には仁太朗と珠那の影を夕闇が長く伸ばしていた。
「お嬢様の前だと、いつまで経っても俺はかっこ悪いままじゃないですか」
仁太朗が低く零した声に思わず目線を上げる。
今の仁太朗が珠那をお嬢様と呼ぶ時はからかいたい時か余裕を失った時。
「仁……?」
「いつもお嬢様は先回りして、俺の世話を焼いてばかりで」
「少し私が鬱陶しかったんでしよ?」
「それは……。7年ぶりに再会して、今度は俺が振り回してやろうと、珠那で愉しんでやるつもりでした」
「仁に、からかわれてたのはわかってるわ」
「けど、結局、珠那に振り回されるのは俺のほうで」
「再会してからは振り回してないでしょ?」
「振り回されてましたよ。急に俺を褒めてきたり、素直に照れたり、昔の珠那がどれだけ無理して頑張っていたのかわからされたり、調子を狂わされてばかりで。気がついた時には」
「時には?」
珠那が首を傾げて聞き返すと、仁太朗は言葉に詰まる。
「昔の珠那への見方さえ変わるほど、今の珠那に惹かれていました」
仁太朗の憂いを孕ませた真摯な瞳に、きゅっと胸が締め付けられる。
「なのに、先に珠那から言わせて。どこまで俺はかっこ悪いのか……」
「仁は、かっこいいわ」
自嘲したように笑う仁太朗の頬に、そっと手を伸ばして、指で触れた。
肌理細かくて、指触りでさえ心地いい。
宮廷最強の守護官が――かっこ悪いという単語に一番縁のなさそうな仁太朗が珠那にとっては愛おしくてたまらない。
「――珠那には一生、敵いそうもありません」
「じゃあ、もう私をからかうのはやめてくれる?」
「それは無理です」
「何で……?」
「言わせたいんですか?」
仁太朗に妖しく悪戯な笑みを浮かべられ、今度は珠那が唇を噛む番だった。
自身の腕の中へと仁太朗は珠那を閉じ込めた。
「……7年前は私たちがこうなるなんてお互い思いも寄らなかったわね」
「はい。珠那と再会出来て良かった……」
「――私もよ」
7年前、珠那の従者見習いだった仁太朗と恋に落ちるなんて考えもつかなかった未来へと繋がっていた。
目に見えない引力に導かれるように仁太朗と再会して、今の仁太朗を知るたび芽生えた恋心が育まれていって。
「もっと教えて。私の知らなかった仁のこと、たくさん……」
「俺も。今度こそ必ず俺の手で珠那を守ります」
【宮廷最強の守護官は、調香宮女にだけ惑わされる~七年ぶりに再会したお嬢様と年下従者の恋模様~】end
珠那をからかう皮肉が混ざった時とは違う――昔と同じ飾り気のない笑みだった。
「ねえ、仁」
「何ですか?」
「私、仁が好きみたい」
挨拶をするように自然と告げることが出来た愛の告白。
緊張はしていても不思議と珠那は怖くなかった。
仁太朗にとっても予期せぬものだったらしく、ただ珠那を見つめたままでいる。
「昔は仁を弟みたいに思っていただけだったわ。でも、仁と再会して、今の仁を好きになっていったの」
珠那をからかって笑うところも、守護官の責務を全うする姿も、仁太朗のことばかりが珠那の心を占領して、惹かれて止まらなかった。
「理由があってもなくても仁に会いたいし、偶然の再会に頼るんじゃなくて、これから先の仁のことも知りたいって思ってる」
言い終えた時には恥ずかしくて珠那は身の置き所がなくなっていた。
耐えきれず、斜め下方へ傾けた視線。
地面には仁太朗と珠那の影を夕闇が長く伸ばしていた。
「お嬢様の前だと、いつまで経っても俺はかっこ悪いままじゃないですか」
仁太朗が低く零した声に思わず目線を上げる。
今の仁太朗が珠那をお嬢様と呼ぶ時はからかいたい時か余裕を失った時。
「仁……?」
「いつもお嬢様は先回りして、俺の世話を焼いてばかりで」
「少し私が鬱陶しかったんでしよ?」
「それは……。7年ぶりに再会して、今度は俺が振り回してやろうと、珠那で愉しんでやるつもりでした」
「仁に、からかわれてたのはわかってるわ」
「けど、結局、珠那に振り回されるのは俺のほうで」
「再会してからは振り回してないでしょ?」
「振り回されてましたよ。急に俺を褒めてきたり、素直に照れたり、昔の珠那がどれだけ無理して頑張っていたのかわからされたり、調子を狂わされてばかりで。気がついた時には」
「時には?」
珠那が首を傾げて聞き返すと、仁太朗は言葉に詰まる。
「昔の珠那への見方さえ変わるほど、今の珠那に惹かれていました」
仁太朗の憂いを孕ませた真摯な瞳に、きゅっと胸が締め付けられる。
「なのに、先に珠那から言わせて。どこまで俺はかっこ悪いのか……」
「仁は、かっこいいわ」
自嘲したように笑う仁太朗の頬に、そっと手を伸ばして、指で触れた。
肌理細かくて、指触りでさえ心地いい。
宮廷最強の守護官が――かっこ悪いという単語に一番縁のなさそうな仁太朗が珠那にとっては愛おしくてたまらない。
「――珠那には一生、敵いそうもありません」
「じゃあ、もう私をからかうのはやめてくれる?」
「それは無理です」
「何で……?」
「言わせたいんですか?」
仁太朗に妖しく悪戯な笑みを浮かべられ、今度は珠那が唇を噛む番だった。
自身の腕の中へと仁太朗は珠那を閉じ込めた。
「……7年前は私たちがこうなるなんてお互い思いも寄らなかったわね」
「はい。珠那と再会出来て良かった……」
「――私もよ」
7年前、珠那の従者見習いだった仁太朗と恋に落ちるなんて考えもつかなかった未来へと繋がっていた。
目に見えない引力に導かれるように仁太朗と再会して、今の仁太朗を知るたび芽生えた恋心が育まれていって。
「もっと教えて。私の知らなかった仁のこと、たくさん……」
「俺も。今度こそ必ず俺の手で珠那を守ります」
【宮廷最強の守護官は、調香宮女にだけ惑わされる~七年ぶりに再会したお嬢様と年下従者の恋模様~】end



