今度会ったらキスしよう

「で? 私に結局何が言いたかったの、いさちゃん」
 許斐のかたちをした『それ』が、意地悪な顔をして机に頬をつく。
 ああ、何やってんだ私。
 いや、いいんだ。言っとかないとダメだったんだ。笑われてもビンタされてもいいから、言おうって決めてたんだから。
「……私さやっぱりまだ許斐のこと、そういうふうに見れるのかわかんないよ」
「なんだ、またそれか」
 『それ』はつまらなそうな顔をして、窓の外に目を向けようとする。けれど、許さない。
 本当は聞いてからにしようと思ってた。でも勝手に死んだ分の罪滅ぼしだと思って許してほしい。
「こっち向け」
「いさ、ちゃん?」
 両頬を私に固定された『それ』は、急に『許斐』そのものになっていた。あの日と一緒だ。泣きたいくせに泣かない許斐、叫びたいくせに叫ばない許斐。
「だから許斐と付き合えるかどうか。キスしてから、考えたい」
 自分でもめちゃくちゃな論理だ。絶交されてもおかしくないと思う。
 でも私は心底真面目だった。こうしないと、私も私の本心がわからなかったから。
 自分が人を好きになるだなんて、考えたこともなかったから。
「ああ、よかった」
 頬を赤く染めて、許斐は笑う。
 いつだってそうだった。
 私の悩みを見透かして、私の知らない私を見透かして、許斐は笑う。そんなわかりきったこと聞かないでよって顔をして、私のこと、抱き締めながら。
「やっと目、見てくれた」
 それで、私たちの影は静かに重なった。