今度会ったらキスしよう

『ねえ、許斐が死んだって本当?』
 鞄を肩に提げて靴の踵に指を入れた瞬間に、スマホの通知音が鳴った。最近許斐と仲良くしている、見た目が派手なクラスの女子からだった。
 届いたメッセージの意味を、私は三回読んでも理解できなくて、次の瞬間には許斐に電話をかけていた。ねえ、変な噂流されてるよ。さすがに不謹慎すぎると思う。許斐、あのさ、わたしやっぱり許斐と一緒にいたいよ。許斐はどう? 私の勘違いだったらごめんね。最近の許斐さ、なんか無理してるように見えて。
『おかけになった電話は現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』
 私の勘違いかな。昨日、一緒に歌ってた動画見つけて。黒歴史になるかもって感じなんだけど、でもなんか泣けてきちゃってさ。このまま許斐と、終わりたくないなって、思ってさ。今日、話しかけなきゃって思ってたんだよ。
『おかけになった電話は現在電波の届かない場所に……』
 全然繋がんないじゃん。どこにいるんだよ。学校行く時間だよ。会おうよ。会いたいよ。私許斐に、言わなきゃいけないこと沢山あるんだよ。多分誰にも言わなくていいことも、許斐には聞いてほしいんだよ。
 出てよ、許斐。このままじゃ、本当になっちゃうよ。
「……出てよ」

 始発から二番目の電車に許斐は轢かれたらしい。
 許斐の父親は精神を病んでいて、監視カメラの映像によると、心中自殺と見るのが妥当だろうと夕方のニュースは言っていた。
 ああ、そっか。
 許斐は滅多に家族の話をしないけど、お父さんが可哀想って、たまに言うんだよね。
『私さ、死ぬときは綺麗に死にたいな』
 あんたさ、そんなこと言ってなかったっけ。
『お花に囲まれて、とか?』
『うわ、そういうの最高。もし選べるタイミングが来たら、絶対それ採用するよ』
 嘘つき。あんたメチャクチャになって死んだよ。見てないから知らんけど、多分綺麗じゃなかったよ。
 わかるよ、選べなかったんでしょ。そうするしかなかったんだよね。
 でも、でもさ。
 なんで私になんにも言わずに死ぬかな。そうしようって、決めたのかな。
 もう私は許斐にとってなんでもなかった? そうなの? 答えてよ。お葬式なんか行けないよ。成仏してほしいだなんてこれっぽっちも思ってないよ。安らかに寝てんじゃねえよ、馬鹿。
『だって僕らまた巡り会えるかもわからない』
 私はそっと、削除した。