俺の親友は格好良い奴だ

『私、遥斗(はると)くんのことが好きなんだけど』
 小学五年生の時、高坂(こうさか)遥斗は同じクラスの女子から告白された。
 高身長で顔も整っていて運動神経も抜群。おまけに地域のミニバスケットボールのクラブチームにも入っている遥斗は女子からモテた。

『入学した時からずっと高坂くんのこと、良いなって思ってて』
『高坂くん、私と付き合ってください』
 中学生になっても、遥斗は女子からモテた。相変わらず顔が整っていて高身長。おまけにバスケットボール部に所属しているので注目を浴びる方だった。女子から告白される頻度は三ヶ月に一度くらい。仲の良い男友達からは羨ましがられた。

『高坂くんが好きです』
『あたし、高坂くんが好き』
『ねえ遥斗、ウチら付き合わない?』
 高校生になってからは、告白される頻度が更に増え、現在高校一年の四月下旬で三回も告白されている。二年生や三年生の先輩女子達も、遥斗に注目しているらしい。

「おい高坂、お前また告白されたんだってな。しかも相手は二年の美人だろ?」
「どこから聞いたんだよそれ」
 放課後、部活終わりに同じバスケットボール部の同学年からニヤニヤしながら話しかけられた。遥斗はやや呆れながら苦笑する。
 部活が終わった体育館だが、自主練をする生徒達もちらほらといた。
「バスケ部の先輩達も話してたぞ。お前がまた女子を振ったって。多分先輩と同じクラスだったんじゃね?」
 その言葉に、遥斗は軽くため息をつく。
「お前は良いよな。何もしなくても女子が寄り付くんだからな」
 バシッと肩を叩かれた。
(いて)えなおい」
(わり)い悪い。力加減ミスったわ」
 同学年の男子生徒はケラケラと笑っている。
「てか、女子に寄り付かれても別に嬉しくも何ともねえよ」
 遥斗はそう吐き捨てた。
「うわ、それモテる奴のセリフだわ。こんちくしょう。バスケも一年でレギュラー入りの候補だし」
 遥斗は再びバシッと肩を叩かれた。
「だから(いて)えって」
 遥斗はバシッと男子生徒の肩を叩き返した。
 遥斗は初めて告白された時から一貫して自身に告白してきた女子達をあっさと振っている。
(何というか俺に告白してくる女子って、俺のことをアクセサリー程度としか思ってない感じがするんだよな)
 胸の中に広がるのは虚しさ。きっと女子達は遥斗の見た目しか見ていないと感じたのだ。

 その時、遥斗は自主練をしている男子生徒に目を向ける。
(トモ、今日も自主練してんのか)
 村田(むらた)智則(とものり)。遥斗と同学年で幼馴染だ。
 智則真剣な表情でゴールを見つめ、フリースローを打つ。どうやらフリースローの練習をしているようだ。しかし、ボールはゴールのリングの端に当たり弾かれてしまう。それでも智則は何度も練習し、フリースローの精度を上げようとしていた。近くにいたフリースローの成功率が高い先輩にコツを聞いたりしている。その表情は直向きで一生懸命であることが少し離れた位置にいる遥斗もよく分かった。

「おい、高坂、何見てんだ? ああ、村田? そういやお前村田と幼馴染なんだよな」
「ああ。幼稚園の時からな。家も近くだし」
「へえ。まあ何か村田って良い奴だよな。この前俺雑用で大変だった時、あいつ手伝ってくれてさあ」
「ああ。トモは……昔からずっと良い奴だよ」
 遥斗は先輩からアドバイスをもらい見事にフリースローを決める智則を見ながらそう答えた。
 フリースローを決めた智則は、明るく嬉しそうな表情だった。智則はアドバイスをした先輩に素直にお礼を言っており、先輩も何だかくすぐったいような表情をしていた。

 身長百八十四センチの遥斗よりは低いが、それでも百七十五センチあるので決して小さい方ではない智則。顔立ちは平凡で、遥斗と並ぶと霞んでしまうと周囲からはよく言われているらしいが、容姿が醜いというわけではない。運動神経も、高校一年でレギュラー入りする遥斗よりは劣るが、決して悪いわけではない。ただ、やはり周囲からの智則の評価は可もなく不可もなく、平凡といった感じなのだ。
(でも、トモはあんな風に一生懸命で、俺とミニバスやってた頃からバスケ上手い先輩に素直にアドバイスを求めて実行するし、雑用も嫌な顔せずやるんだよな。そういうとこ、(すげ)え)
 遥斗は幼馴染である智則のことを、素直に認めていた。

「おーい、遥斗、お待たせ」
 男子バスケットボール部の部室で着替えていたら、自主練を終えた智則が入って来た。
 帰る方向が同じなので、遥斗は智則と一緒に帰ることが多い。
「お前、よく頑張るな」
「早く遥斗みたいにレギュラー入りしたいし。それに今日のゲーム形式での練習、俺フリースロー外したから精度上げなきゃなって思ってさ」
 練習着を脱ぎ制服に着替えながら智則はそう話していた。
「いや、俺もまだレギュラーに決まったわけじゃないし」
「でも、一年の中じゃ一番上手いし先輩達も遥斗にレギュラー奪われないか警戒してるよ」
 ハハッと智則は笑う。
「あ、そうそう遥斗。俺のクラスの女子がさ、遥斗と話がしたいって」
 智則にそう言われ、遥斗は心底うんざりした表情になる。
「トモ、俺そういうのはやめろって言ってるよな」
「うん。だから断っておいた。いやあ、女子から話しかけられたと思ったら大体みんな遥斗のこと聞くんだよね」
 ハハッと困ったように笑う智則。小学校高学年の頃から遥斗目当ての女子に遥斗を紹介するよう求められることが多かったのだ。
(だけど、俺に近付いたり告白してくる女子達ってみんなトモは俺の親友としては釣り合わないだの色々言ってくるからな。トモに俺を紹介するよう求めておいてさ)
 いちいち自分に告白してきた女子や近付いてくる女子のことを覚えてはいないが、大多数は智則のことを悪く言っていた。そういった理由もあるので、遥斗は女子達からの告白を断っていたのだ。
(ま、トモのことを悪く言わない人、俺の中身を見てくれる人。そういう人ならまあ付き合うとか考えても良いけど)
 遥斗はそんなことを思いながら、着替え終わった智則と一緒に部室を出て帰るのであった。