きみの心をのぞかせて

*


A『す、すみません! オーダーが通っていなかったみたいで……、すぐに作ります!』
B『大丈夫ですよ。全然急いでないので。……でも、トッピングおまけしてもらっちゃおうかなあ~?』
A『はい! もちろんです! 何にしますか?』
B『じゃあ、味玉に海苔にコーンに……、あと替え玉もトッピングしてください!』
A『かしこまりました……って、ずっ、図々しい!』

 
「八重花ちゃん、棒読みすぎるよう! もっと感情を込めて! あなたはA役、つまりオーダーを通し忘れてしまって焦っているラーメン屋の店員さんなの!」

 B役、ラーメン屋に来たお客さんの台詞を読んだちとせが、河川敷で吠えた。

「そんなこと言われても、私は声優志望じゃないし!」

 ちとせに言われるがままA役の台詞を読んでみたけれど、私は本当に演技の才能が無いということを思い知った。
 AとBの台詞が描かれたA4の紙に目を落とし、大きくため息をつく。

「二人で一緒に声優養成所の入所オーディションを受ける。」

 それが、転入生が私に要求してきた「罪滅ぼし」だった。
 声優養成所とは、声優になりたい人たちが通う学校のような場所だ。レッスンを受け、実力をつけて認められれば声優になれるかもしれない。
 彼女はアニメ声で、やたら「発声練習」という単語を口にしていたけれど、本当に声優を目指しているらしかった。
 オーディションは次の週、都内の声優養成所のスタジオで行われるらしい。二人一組で受ける必要があるという。
 ちとせは、元々は知り合いを誘っていたけれど、その子が他の養成所に一人で合格してしまったので、新しい相方を探していたのだそうだ。
 多目的室で謝罪した後、彼女はすぐに私と連名でオーディションに申し込み、翌日には課題である台詞の書かれたコピー用紙の台本を用意した。
 そして放課後になり、さっそく河川敷で練習させられている。
 台詞から察するに、Aはおそらくラーメン屋さんの店員さん。Bはラーメン屋のお客さん。お客さんが注文したラーメンの注文が通っておらず、店員が謝罪する。しかしお客さんも調子に乗って、たくさんのトッピングや替え玉をおまけしてもらおうとする――というシーンだ。
 状況はわかったけど、どのように演技していいかわからない。何度台詞を読んでみても棒読みになってしまう。

「やっぱり、私なんかが相手だと足を引っ張るだけだって」
「そんなことないよ! 八重花ちゃんがいなかったら、私はオーディションを受けることすらできないんだよ!?」
「罪滅ぼしどころか、余計に迷惑かけちゃうかもよ?」
「だーかーら、こうして練習してるんじゃん! 八重花ちゃんはすんごーく良い声してるんだから、もっと自信持って! 上手くやろうとしなくていいの。とにかく、もっと感情を出そう!」

 私は自分の喉をさすりながら俯いた。

「……それが、よくわからなくて」
「何が?」
「感情を出すとか、よくわからない……」

 怒られた幼稚園児みたいにしぼむ私の言葉を、ちとせは笑わなかった。彼女は真面目な顔になり、一度大きく頷く。