――あ、苦手なタイプだ。
後期授業が始まる日の朝。
私は確信していた。
教壇に立つツインテールの女の子を見つめながら。
「みなさん、初めまして! 加藤ちとせと申します! ちとせって呼んでくださ~い!」
笑顔で名乗る転入生は、声優のように高く、可愛らしい声だった。声だけではなく、テンションも高い。SNSのおすすめ動画で見かける、コンサート中のアイドル声優みたいだった。
「えっ、声優みたい!」
二年三組の教室内にどよめきを生んだ彼女はそのまま自己紹介を続ける。
「好きなことは、歌うことと食べることです。この高校には学食があるって聞いてすごく楽しみにしてました。おすすめメニューがあったら、ぜひぜひ教えてください! よろしくお願いします!」
加藤さんが頭を下げると、盛大な拍手が鳴った。担任に促され、彼女は一番後ろの列に用意されていた空席に向かう。
「……」
ちらりと転入生を横目で追う。さっそく周りの席のクラスメイトたちに話しかけられていた。
「ねえ、八重花! すんごいアニメ声だねえ、あの子」
一限の数学の教科書やノートを用意していると、隣の席の友だちが私の顔をのぞきこんだ。
「ね。可愛い声。私は低めだから羨ましい」
私は本人に聞こえないよう、声を潜めて微笑む。
「もしかして、八重花は苦手なタイプだったりする?」
「な、なんで?」
私は「どうしてそんなことを訊くのかわからない」という顔をして首を傾げた。――内心では冷や汗をかきながら。
「ほら、八重花って優等生タイプでいつも落ち着いてるじゃん? ああいう、テンション高すぎる子は苦手なのかも?って」
「そんなわけないじゃん! クラスの雰囲気明るくなるし、良い子そうだし。……ところで課題のプリントはちゃんと持ってきたの? 締切、今日だよ?」
友人は「そうだった!」と慌ててスクールバッグの中を漁り始める。
こっそりため息をついていると、「よかったぁ」と、加藤さんの声が聞こえてきた。
「みんな話しかけてきてくれて嬉しい。緊張してたからほっとしたよ~」
「……」
よく通るアニメ声に、私の胸はチクリと痛んだ。
後期授業が始まる日の朝。
私は確信していた。
教壇に立つツインテールの女の子を見つめながら。
「みなさん、初めまして! 加藤ちとせと申します! ちとせって呼んでくださ~い!」
笑顔で名乗る転入生は、声優のように高く、可愛らしい声だった。声だけではなく、テンションも高い。SNSのおすすめ動画で見かける、コンサート中のアイドル声優みたいだった。
「えっ、声優みたい!」
二年三組の教室内にどよめきを生んだ彼女はそのまま自己紹介を続ける。
「好きなことは、歌うことと食べることです。この高校には学食があるって聞いてすごく楽しみにしてました。おすすめメニューがあったら、ぜひぜひ教えてください! よろしくお願いします!」
加藤さんが頭を下げると、盛大な拍手が鳴った。担任に促され、彼女は一番後ろの列に用意されていた空席に向かう。
「……」
ちらりと転入生を横目で追う。さっそく周りの席のクラスメイトたちに話しかけられていた。
「ねえ、八重花! すんごいアニメ声だねえ、あの子」
一限の数学の教科書やノートを用意していると、隣の席の友だちが私の顔をのぞきこんだ。
「ね。可愛い声。私は低めだから羨ましい」
私は本人に聞こえないよう、声を潜めて微笑む。
「もしかして、八重花は苦手なタイプだったりする?」
「な、なんで?」
私は「どうしてそんなことを訊くのかわからない」という顔をして首を傾げた。――内心では冷や汗をかきながら。
「ほら、八重花って優等生タイプでいつも落ち着いてるじゃん? ああいう、テンション高すぎる子は苦手なのかも?って」
「そんなわけないじゃん! クラスの雰囲気明るくなるし、良い子そうだし。……ところで課題のプリントはちゃんと持ってきたの? 締切、今日だよ?」
友人は「そうだった!」と慌ててスクールバッグの中を漁り始める。
こっそりため息をついていると、「よかったぁ」と、加藤さんの声が聞こえてきた。
「みんな話しかけてきてくれて嬉しい。緊張してたからほっとしたよ~」
「……」
よく通るアニメ声に、私の胸はチクリと痛んだ。
