私の仕事は、受付という名の人数のカウント係。
みんなおそろいの赤いハッピを着て、教室の前扉のそばに立つ。
道行く人たちに、「どうぞー」「縁日やってまーす」と声をかけながら、教室に入ってくれた人を手持ち数取器で数えていく。
「それなりに来てるね」
「うん。まあ、それなりに」
私の手元の数を見て、ほえー、と頷く夏実は、呼び込み係だ。
手持ち用の看板を掲げて、校内をひたすら練り歩いている。
「てか、もうすぐうちら休憩じゃん?」
「うん」
「ちょうど休憩入る時間から、校庭のステージで有志のライブあるらしいよ! 去年見れなかったやつ!」
そういえば、去年はちょうどシフトの時間が被ってて見に行けなかったっけ。
生徒会の独断と偏見のオーディションを勝ち抜いた、校庭有志ライブ。
夏実も同じシフトだったから、見に行けなくて少し悔しそうだったっけ。
「行こいこ! 夏フェスみたいで楽しいって、有名らしいもんね」
まあ、校内だけの寂しい人気だけど。
次のシフトの人に軽く引き継ぎをして、夏実と一緒に校舎の外に出る。
校庭の野外ステージの前には、それなりに人が集まっていた。
「楽しみだね!」
「ね! どんな人が出てくるんだろう」
夏実に問いかけると、うーん、と少し首を左に傾けたあと、「陽キャじゃない?」と返ってきた。確かに、と思った。
「第五十五回文化祭、野外ライブへようこそ! 今年も生徒会の独断と偏見で選ばれたライブをお楽しみください! 最初は──」
生徒会長のノリノリなナレーションのあとに出てきた人が、今流行りのうたを歌ったり、音楽を披露したりしていく。
中盤に差し掛かったころ。
ギターを肩にかけた人と、マイクを持った人の男子生徒二人組がステージに立った。
マイクを持った人が、すぅっと息を吸って、柔らかい声で、有名なスリーピースバンドの人の応援ソングを歌いだした。
──視界が、輝いた。
楽しそうにうたを歌い、ギターを弾く仲間と目を合わせて笑う表情が、まるで太陽みたいだと思った。
あの人の歌声が、耳にこびりついて離れない。
あの人の表情が、瞼に張り付いて離れない。
こんな気持ち、はじめてだ。
胸が高鳴る。耳の奥で、どくどくと血流が暴れる音が聞こえる。周りに人がいるはずなのに、まるで今この空間に私と彼の二人しかいないような感覚に陥る。
ファンサをもらったわけでも、目が合ったわけでもないのに。
私はおかしくなってしまった。頭がおかしい。
目が勝手に彼を追いかける。吸い込まれる。
彼はブラックホールなのだろうか。
そんな変なことを考えてしまうほど、私の頭はまともなことを考えることを放棄していた。
「──香、桃香!」
「ぅわぁっ!」
「大丈夫? なんかすごいぼーっとしてるけど」
夏実の声で、ハッとする。
思わずステージを見ると、もう知らないし興味もない別の人が歌っていた。
「……夏実、私おかしくなっちゃったかも」
ボソッと言うと、夏実は眉間にしわを寄せた。
「……はぁ?」
みんなおそろいの赤いハッピを着て、教室の前扉のそばに立つ。
道行く人たちに、「どうぞー」「縁日やってまーす」と声をかけながら、教室に入ってくれた人を手持ち数取器で数えていく。
「それなりに来てるね」
「うん。まあ、それなりに」
私の手元の数を見て、ほえー、と頷く夏実は、呼び込み係だ。
手持ち用の看板を掲げて、校内をひたすら練り歩いている。
「てか、もうすぐうちら休憩じゃん?」
「うん」
「ちょうど休憩入る時間から、校庭のステージで有志のライブあるらしいよ! 去年見れなかったやつ!」
そういえば、去年はちょうどシフトの時間が被ってて見に行けなかったっけ。
生徒会の独断と偏見のオーディションを勝ち抜いた、校庭有志ライブ。
夏実も同じシフトだったから、見に行けなくて少し悔しそうだったっけ。
「行こいこ! 夏フェスみたいで楽しいって、有名らしいもんね」
まあ、校内だけの寂しい人気だけど。
次のシフトの人に軽く引き継ぎをして、夏実と一緒に校舎の外に出る。
校庭の野外ステージの前には、それなりに人が集まっていた。
「楽しみだね!」
「ね! どんな人が出てくるんだろう」
夏実に問いかけると、うーん、と少し首を左に傾けたあと、「陽キャじゃない?」と返ってきた。確かに、と思った。
「第五十五回文化祭、野外ライブへようこそ! 今年も生徒会の独断と偏見で選ばれたライブをお楽しみください! 最初は──」
生徒会長のノリノリなナレーションのあとに出てきた人が、今流行りのうたを歌ったり、音楽を披露したりしていく。
中盤に差し掛かったころ。
ギターを肩にかけた人と、マイクを持った人の男子生徒二人組がステージに立った。
マイクを持った人が、すぅっと息を吸って、柔らかい声で、有名なスリーピースバンドの人の応援ソングを歌いだした。
──視界が、輝いた。
楽しそうにうたを歌い、ギターを弾く仲間と目を合わせて笑う表情が、まるで太陽みたいだと思った。
あの人の歌声が、耳にこびりついて離れない。
あの人の表情が、瞼に張り付いて離れない。
こんな気持ち、はじめてだ。
胸が高鳴る。耳の奥で、どくどくと血流が暴れる音が聞こえる。周りに人がいるはずなのに、まるで今この空間に私と彼の二人しかいないような感覚に陥る。
ファンサをもらったわけでも、目が合ったわけでもないのに。
私はおかしくなってしまった。頭がおかしい。
目が勝手に彼を追いかける。吸い込まれる。
彼はブラックホールなのだろうか。
そんな変なことを考えてしまうほど、私の頭はまともなことを考えることを放棄していた。
「──香、桃香!」
「ぅわぁっ!」
「大丈夫? なんかすごいぼーっとしてるけど」
夏実の声で、ハッとする。
思わずステージを見ると、もう知らないし興味もない別の人が歌っていた。
「……夏実、私おかしくなっちゃったかも」
ボソッと言うと、夏実は眉間にしわを寄せた。
「……はぁ?」


