大切な人を傷つける、温かい春景色

 翌日からも順調に準備は進んだ。
 色とりどりのペンキで看板を作ったり、屋台作成の手伝いをしたり。
二週間後には看板も完成して、次は教室の飾りつけが始まった。
 最初に作った提灯をタコ糸にくっつけて、天井からつるしたものの下で日中は授業を受けることになる。
「なんか、お祭りの雰囲気の中で授業受けるなんて、いつもの倍楽しくないね」
 提灯を見上げながら、げんなりとした顔で夏実は言った。
「楽しいのかつまんないのかはっきりしないもんね」
「そう! 視界がバグるよね」
 そんな会話をしながら、授業を受け、放課後はワイワイ楽しく準備を進めること一か月。
 とうとう文化祭当日は、明日に迫っている。
「景品はあげないけど、みんなで遊びましょう!」
 準備が早く終わったからか、下校時間の1時間ほど前に実行委員の人から声がかかる。
 ぶわわっと、私の中でテンションが上がる。
「おぉー!」と、クラス中に歓声が湧き、きっと体育祭とかそういうのよりもクラスがひとつになった瞬間だったように思う。
「夏実、なにする?」
「え、どうしよ。てかどうでもいいとか思ってたけど、意外とテンション上がるもんだね」
 そう話す夏実を引っ張って、ヨーヨー釣りのところへ行く。
 あまり乗り気じゃない人とか、明日に備えて早く寝たいとかいう人は帰っていて、教室内の人は少しだけ減っていた。
「あたし、これ釣れたことないよ?」
「私、いっぱい釣ったことあるよ! お母さんが言ってただけで記憶ないけど」
 謎に湧き出てくる自信を持って、針つきこよりを握る。狙いを定めて、まずは一番手前の水色と白の柄の水風船のゴムの輪っかに針をかける。
 あとは勢いよく引き上げる!
「あ、切れた……」
「ぷ、あははっ!」
 私が呆然としていると、夏実は爆笑していた。そんなに笑わなくてもいいのに。
 でも、私もそれにつられて吹き出してしまった。
「はぁー、笑ったーっ」
 夏実が息を切らして、目に浮かんだ涙をひーひー言いながら拭っている。
 それからは射的で黒板を打ち付け、スーパーボールすくいでポイに穴を開けて、私たちはまた、笑った。