飲み会が終わるころ、夏実からメッセージが入っていた。
高校を卒業したことをきっかけに、なかなか連絡ができない日が続いていつしか一切連絡を取らなくなっていた。
連絡が途絶えると、ふと思い出しても迷惑になりたくなくて。
見ている世界が違うから、邪魔をしたくなくて。
気付いたときにはトーク履歴を下から数えた方が早くなっていた。
だから、ロック画面に夏実の名前が表示されたのを見た時は驚いた。
【久しぶり】
【これから会えないかな】
そんな、どこか他人行儀なメッセージ。
あのころは、「今ひま?」みたいな一目見てわかるような距離の近さだったのに。今は学生時代みたいなメッセージを送る方が緊張する。
【久しぶり。返事遅くなってごめんね】
【今からでもよければ、会えるよ】
返信すると、意外と早く既読が付いた。そして、二分ほど経ったあと、メッセージが返って来る。
【大丈夫】
【桃香の家の近くの公園でいいかな】
そのメッセージに、【うん】とだけ返して、指定された待ち合わせ場所に向かう。
お酒で少し火照った身体に、春の終わりの夜風は心地良くて。何度かカバンを肩に乗せなおしながら歩く。
公園に着くと、夏実はもうそこにいた。久しぶりに会う夏実は、印象的だったポニーテールをしていた髪をばっさり切って、ボブヘアになってスーツを着ていた。
オフィスカジュアルがそれなりに板についている私と、明らかに新人の夏実は、まるで同い年なのに年下の人に見える。なんか、私老けてるみたい。
「久しぶり。ごめんね、こんな時間に呼び出して」
なんだか高校時代とは打って変わって、大人っぽくなっていた。話し方に弾みもそこまでないし、明るさも少し減っているように感じる。
「いいよ。元気?」
「元気だよ」
会話が全然弾まない。夏実と話してて、こんなに落ち着いた会話をするのはけんかをしたときくらいだった。
「よかった」
「桃香は? 元気?」
「うん。元気」
同窓会で、あんまり関わってこなかった人と隣になったみたいな感覚で、なんかちょっと居心地が悪い。同窓会なんてまだ行ったことないけど。
「どうしたの? いきなり」
「ちょっとね。桃香の顔が思い浮かんだから」
そう、近くのブランコに腰かける。
なにを言われるんだろう。そんなに言いにくそうにされると、怖いんだけど。
今まで普通に言えていた言葉も心の中で言うことしかできなくて、ブランコの前の柵に座って夏実の言葉を待つ。
「あたしさ。翠くんに告白されたんだ」
しばらく無言が続いたあと、いきなりそんな告白が飛んできた。
急すぎてはじめは言っている意味がわからなかったけど、だんだん言っている意味が理解できてくる。
「え、そうなの? やっと?」
私が声を上げると、夏実は少し辛そうな顔をした。今までで一度も見たことがないような、深く傷ついた顔だった。
私、なにか間違えた? そんなに嫌なこと言ったかな。
思い返してみても、見当がつかない。
「翠くんと生きていくって決めたんだ」
なにかを宣言するように、夏実は私の顔を一切見ないでそう言い切った。
「おめでとう。石田先輩と夏実、お似合いだもん」
なにも言わないのも変だから、とりあえず祝福の言葉を贈る。めでたいな、という気持ちは本物で、うそなんて一切ないから。
「……うん。それだけ。じゃあ、帰るから」
あっけなくブランコから降りて、さっさと帰っていく。
疲れてたのかな。
私も社会人になりたてのころは家に帰ったらすぐに寝落ちしてしまうくらい疲れていたし、ちょっとそっけないのもしかたないか。
そう思って、私から夏実にメッセージを送る。
【今日は久しぶりに会えてうれしかった】
【また落ち着いたら、一緒におでかけしようね】
でも、そのメッセージに既読が付いたのを最後に、夏実から連絡が来ることはなかった。
高校を卒業したことをきっかけに、なかなか連絡ができない日が続いていつしか一切連絡を取らなくなっていた。
連絡が途絶えると、ふと思い出しても迷惑になりたくなくて。
見ている世界が違うから、邪魔をしたくなくて。
気付いたときにはトーク履歴を下から数えた方が早くなっていた。
だから、ロック画面に夏実の名前が表示されたのを見た時は驚いた。
【久しぶり】
【これから会えないかな】
そんな、どこか他人行儀なメッセージ。
あのころは、「今ひま?」みたいな一目見てわかるような距離の近さだったのに。今は学生時代みたいなメッセージを送る方が緊張する。
【久しぶり。返事遅くなってごめんね】
【今からでもよければ、会えるよ】
返信すると、意外と早く既読が付いた。そして、二分ほど経ったあと、メッセージが返って来る。
【大丈夫】
【桃香の家の近くの公園でいいかな】
そのメッセージに、【うん】とだけ返して、指定された待ち合わせ場所に向かう。
お酒で少し火照った身体に、春の終わりの夜風は心地良くて。何度かカバンを肩に乗せなおしながら歩く。
公園に着くと、夏実はもうそこにいた。久しぶりに会う夏実は、印象的だったポニーテールをしていた髪をばっさり切って、ボブヘアになってスーツを着ていた。
オフィスカジュアルがそれなりに板についている私と、明らかに新人の夏実は、まるで同い年なのに年下の人に見える。なんか、私老けてるみたい。
「久しぶり。ごめんね、こんな時間に呼び出して」
なんだか高校時代とは打って変わって、大人っぽくなっていた。話し方に弾みもそこまでないし、明るさも少し減っているように感じる。
「いいよ。元気?」
「元気だよ」
会話が全然弾まない。夏実と話してて、こんなに落ち着いた会話をするのはけんかをしたときくらいだった。
「よかった」
「桃香は? 元気?」
「うん。元気」
同窓会で、あんまり関わってこなかった人と隣になったみたいな感覚で、なんかちょっと居心地が悪い。同窓会なんてまだ行ったことないけど。
「どうしたの? いきなり」
「ちょっとね。桃香の顔が思い浮かんだから」
そう、近くのブランコに腰かける。
なにを言われるんだろう。そんなに言いにくそうにされると、怖いんだけど。
今まで普通に言えていた言葉も心の中で言うことしかできなくて、ブランコの前の柵に座って夏実の言葉を待つ。
「あたしさ。翠くんに告白されたんだ」
しばらく無言が続いたあと、いきなりそんな告白が飛んできた。
急すぎてはじめは言っている意味がわからなかったけど、だんだん言っている意味が理解できてくる。
「え、そうなの? やっと?」
私が声を上げると、夏実は少し辛そうな顔をした。今までで一度も見たことがないような、深く傷ついた顔だった。
私、なにか間違えた? そんなに嫌なこと言ったかな。
思い返してみても、見当がつかない。
「翠くんと生きていくって決めたんだ」
なにかを宣言するように、夏実は私の顔を一切見ないでそう言い切った。
「おめでとう。石田先輩と夏実、お似合いだもん」
なにも言わないのも変だから、とりあえず祝福の言葉を贈る。めでたいな、という気持ちは本物で、うそなんて一切ないから。
「……うん。それだけ。じゃあ、帰るから」
あっけなくブランコから降りて、さっさと帰っていく。
疲れてたのかな。
私も社会人になりたてのころは家に帰ったらすぐに寝落ちしてしまうくらい疲れていたし、ちょっとそっけないのもしかたないか。
そう思って、私から夏実にメッセージを送る。
【今日は久しぶりに会えてうれしかった】
【また落ち着いたら、一緒におでかけしようね】
でも、そのメッセージに既読が付いたのを最後に、夏実から連絡が来ることはなかった。


