「昨日の課題、なににした?」
古典の授業前に、夏実が私のノートを見る。
「お、なんかいつもより真面目」
「いっぱい書いちゃった」
結局、先輩の言葉も忘れたくなくて、心地いいから、という理由のほかに、先輩が昨日言っていたことも夜、寝る前に書き足した。
「いいね」
「でしょ? この歌、先輩も好きなんだって」
私が言うと、夏実はぱたんとノートを閉じて、机に置いた。そしてやっと口を開いた。
「お、会えた? コーラ渡せた?」
「うん。コーラ好きだって」
「よかったじゃん。ていうかこの歌、その本田先輩とやらが好きだから好きになったの?」
「うん。好きな人のものって、話聞いてたら好きになっちゃうね」
照れ隠しでえへへ、と笑いながら言うと、夏実は少しなにかを考えているのか少し黙って、私の方を見た。
「じゃあ、コーラも好きになった?」
「あれは別だよ! 飲まず嫌いじゃないもん」
「まあ、桃香は炭酸も苦手だもんね」
何度も頷く。それを見た夏実は少し楽しそうに微笑んだ。
そのあと、すぐにチャイムが校内中に鳴り響いて、授業が始まった。
古典の授業中、何度も先輩の言葉を思い出す。
何度も何度も同じ歌を眺めて、そのたびに本田先輩って素敵な人なんだな、と感じる。
「はい、次一之瀬さん」
先生に呼ばれて慌てて立ち上がる。
「はいっ」
「この歌の現代語訳をお願いします」
そう指示された歌は、昔の言葉が並んでいて、今すぐにはとてもじゃないけど現代語に直すことなんてできない。
「すみません、わかりません」
「そう、じゃあ次――」
椅子に座りなおして、教科書を眺める。
やっぱりわからなくて、ふと時計を見ると、授業開始からもう三十分も経っていた。こんなに時間が経つのが速いと感じたのは、夏実とどうでもいい話をしているときとか、先輩と同じ机で勉強をしているときくらいだ。
今日も会いに行っていいかな。静かに勉強するから、いいかな。
だれに許可をもらうわけでもないのになにかにひたすら言い訳を重ねて、やっと放課後になった。
古典の授業前に、夏実が私のノートを見る。
「お、なんかいつもより真面目」
「いっぱい書いちゃった」
結局、先輩の言葉も忘れたくなくて、心地いいから、という理由のほかに、先輩が昨日言っていたことも夜、寝る前に書き足した。
「いいね」
「でしょ? この歌、先輩も好きなんだって」
私が言うと、夏実はぱたんとノートを閉じて、机に置いた。そしてやっと口を開いた。
「お、会えた? コーラ渡せた?」
「うん。コーラ好きだって」
「よかったじゃん。ていうかこの歌、その本田先輩とやらが好きだから好きになったの?」
「うん。好きな人のものって、話聞いてたら好きになっちゃうね」
照れ隠しでえへへ、と笑いながら言うと、夏実は少しなにかを考えているのか少し黙って、私の方を見た。
「じゃあ、コーラも好きになった?」
「あれは別だよ! 飲まず嫌いじゃないもん」
「まあ、桃香は炭酸も苦手だもんね」
何度も頷く。それを見た夏実は少し楽しそうに微笑んだ。
そのあと、すぐにチャイムが校内中に鳴り響いて、授業が始まった。
古典の授業中、何度も先輩の言葉を思い出す。
何度も何度も同じ歌を眺めて、そのたびに本田先輩って素敵な人なんだな、と感じる。
「はい、次一之瀬さん」
先生に呼ばれて慌てて立ち上がる。
「はいっ」
「この歌の現代語訳をお願いします」
そう指示された歌は、昔の言葉が並んでいて、今すぐにはとてもじゃないけど現代語に直すことなんてできない。
「すみません、わかりません」
「そう、じゃあ次――」
椅子に座りなおして、教科書を眺める。
やっぱりわからなくて、ふと時計を見ると、授業開始からもう三十分も経っていた。こんなに時間が経つのが速いと感じたのは、夏実とどうでもいい話をしているときとか、先輩と同じ机で勉強をしているときくらいだ。
今日も会いに行っていいかな。静かに勉強するから、いいかな。
だれに許可をもらうわけでもないのになにかにひたすら言い訳を重ねて、やっと放課後になった。


