***
あれはつい先週のこと。運動部じゃないなら軽音部だ! と意気込んで、放課後の視聴覚室に向かった。
教室のドアからそれらしい姿がないか覗いていると、「どうかした?」と知らない男子生徒が声をかけてくれた。
「あっ、あの、その、おでこが広くて黒髪で、センターパートの、歌がうまくてかっこいい男の人、いますかっ」
声をかけられたことに焦って、まるで男漁りしている人みたいになってしまった。
「……えー……っと……」
困ったように首の後ろをポリポリ掻いて、ちらっと他の部員の方を見たかと思うと、またこちら向き直った。
「……合コンでもします?」
その視線は、明らかに夏実を見ていた。
そう、夏実はモテるのだ。そして、それを夏実があまりうれしく感じないことも私は知っている。
「いや、合コンとかそういうのはいらなくて。なんというか、探し物? じゃないや。探し人がいて、別に軽音部の部員っていう肩書きを持った方に興味があるわけじゃないといいますか、その人以外興味ないので、その、合コンとかは無駄な時間といいますか……。とりあえずそういうの結構ですから!」
ピシャン! と扉を閉めて、早足で教室に戻る。
帰ろうと、机に置きっぱなしにしていたカバンを持つと、夏実は爆笑していた。
「いやー、最高だったね。最高に面白かったわ」
ひーひーと呼吸をして、机をバンバン叩きながら涙を浮かべながらゲラゲラ笑っている。
「……そんなに笑わなくても……」
「いやだって、すごい勢いだったもん。桃香がどれくらいその人のことが好きか、よくわかるくらいすごかったよ」
ほんとにそう思ってる? と思うほど、言葉と言葉の間に笑いが混ざっている。
私がいつもと違う顔をしていたのか、また笑って「だってだって」と言い始めた。
「だって人前で発表したりするの苦手なのに、あの人にはあんなにはっきり言うんだもん。しかもめっちゃ早口! こんなに早口で話す桃香はじめて見たよ」
そう、私のことをよくわかった発言をしながら、帰り道もときどき吹き出して笑っていた。
あれはつい先週のこと。運動部じゃないなら軽音部だ! と意気込んで、放課後の視聴覚室に向かった。
教室のドアからそれらしい姿がないか覗いていると、「どうかした?」と知らない男子生徒が声をかけてくれた。
「あっ、あの、その、おでこが広くて黒髪で、センターパートの、歌がうまくてかっこいい男の人、いますかっ」
声をかけられたことに焦って、まるで男漁りしている人みたいになってしまった。
「……えー……っと……」
困ったように首の後ろをポリポリ掻いて、ちらっと他の部員の方を見たかと思うと、またこちら向き直った。
「……合コンでもします?」
その視線は、明らかに夏実を見ていた。
そう、夏実はモテるのだ。そして、それを夏実があまりうれしく感じないことも私は知っている。
「いや、合コンとかそういうのはいらなくて。なんというか、探し物? じゃないや。探し人がいて、別に軽音部の部員っていう肩書きを持った方に興味があるわけじゃないといいますか、その人以外興味ないので、その、合コンとかは無駄な時間といいますか……。とりあえずそういうの結構ですから!」
ピシャン! と扉を閉めて、早足で教室に戻る。
帰ろうと、机に置きっぱなしにしていたカバンを持つと、夏実は爆笑していた。
「いやー、最高だったね。最高に面白かったわ」
ひーひーと呼吸をして、机をバンバン叩きながら涙を浮かべながらゲラゲラ笑っている。
「……そんなに笑わなくても……」
「いやだって、すごい勢いだったもん。桃香がどれくらいその人のことが好きか、よくわかるくらいすごかったよ」
ほんとにそう思ってる? と思うほど、言葉と言葉の間に笑いが混ざっている。
私がいつもと違う顔をしていたのか、また笑って「だってだって」と言い始めた。
「だって人前で発表したりするの苦手なのに、あの人にはあんなにはっきり言うんだもん。しかもめっちゃ早口! こんなに早口で話す桃香はじめて見たよ」
そう、私のことをよくわかった発言をしながら、帰り道もときどき吹き出して笑っていた。


