郵便受けを開けると、幾つもの請求書が、まるでこちらの帰りを待ち構えていたかのように顔を覗かせていた。一枚、また一枚と取り出すたび、胸の奥から溜息がこぼれる。家賃、電気、水道、カードの支払い――どれも見慣れた宛名と金額ばかりなのに、今月だけは妙に重く感じられた。
私は最後の一枚を抜き取り、しばらく郵便受けの中を隅々まで覗き込んでいた。
もう何もない。
それを確かめてから、鍵を取り出した。冷たい鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。ガチャ、と乾いた音がした。
玄関を開けると、冷蔵庫が、壁の向こうから聞こえてくる遠い機械音のように低く唸っていた。電気は点いている。蛇口をひねれば水も出る。今日のところは、それで十分だった。風呂に湯を張れば、この冬の寒さにすっかり冷えた身体も、少しは元に戻るだろう。
そう思うと、張りつめていたものが、ほんの少しだけ緩んだ。
ローファーを脱ぎ、軋む廊下を進んで、鞄を下ろす。居間から襖一枚隔てた母の部屋を見ると、扉は閉まっていた。いつもなら、帰ってきたことを知らせるために声をかける。けれど今日は、なぜかすぐには声が出なかった。
眠っているのか。起きているのか。それとも、また何も聞こえないふりをしているのか。その答えは襖を開ければ直ぐに分かるのに、しばらく立ったまま、閉じた扉を見つめていた。
昨夜の母は、ひどく荒れていた。珍しく台所に立ち、料理をしている姿を見て、私は少し嬉しくなった。鍋から立ちのぼる湯気も、包丁がまな板を叩く音も、久しぶりに見る母の背中も、何もかもが懐かしかった。今日は、少し違うのかもしれない。そんなことを思った。だから、後ろからそっと覗き込んで、「何作ってるの?」と声をかけた。
しかし、母は振り返らなかった。代わりに、包丁を握る手が止まった。その瞬間、胸の奥で膨らんでいた小さな期待が、音もなく萎んでいくのが分かった。
母はしばらく黙ったあと、低い声で何かを呟いた。聞き取れなかった。聞き返すこともできなかった。ただ、握られた包丁だけが、妙にはっきりと目に焼きついていた。
いったい、何がいけなかったのだろう。
声をかけたことだろうか。
帰ってきたことだろうか。
それとも、嬉しそうに母の背中を見ていたことさえ、いけなかったのだろうか。
床に散らかった皿の破片をひとつずつ拾い集めながら考えていると、指先に触れた欠片が薄皮を裂いた。痛い、と感じるより先に、母に見られていないことにほっとした。
私はただ、久しぶりに母が料理をしているのが嬉しかっただけだった。
それだけだったはずなのに。
どうして、あんなことになったのだろう。
絆創膏を貼った指先に触れる。その痛みで、ようやく現実に引き戻された。小さく息を吸う。
「……ただいま」
返事はなかった。もう一度、今度は少しだけ声を張る。
「ただいま、お母さん」
「……ああ、美幸?お帰りなさい」
衣擦れの音と共に、酒焼けしたような、ひどく掠れた声が返ってきた。真夜中に突然、ヒステリックに叫びながら何枚もの皿を叩き割っていたせいか、その声にはまだ昨夜の名残があった。
「ねえ。夕飯の買い出しと、電気とか水道代の支払いに行きたいんだけど、通帳ってどこに仕舞ったの?今日って確か、お父さんからの仕送りがある日だよね?」
通帳の場所を尋ねただけなのに、扉の向こうからは返事ではなく、「博司さん」と囁くような声が聞こえてくるだけだった。
離婚して以来、母は時々、こうして父の名前を口にするようになった。精神の均衡を欠いている今の母に、何を聞いても、きっとまともな答えは返ってこない。母だって、きっと苦しいのだ。
裕福な暮らしとまではいかなかったが、以前は、少なくとも今日のように請求書の一枚一枚に怯える必要はなかった。
父が家にいた頃は、家賃も光熱費も、食費も、私にはほとんど関係のないものだった。私も母も、今ほど金銭のことを気にしてはいなかったように思う。母が働かなくとも、美味しい食事にありつけたし、欲しいものがあれば、多少の遠慮はしながらも買うことができた。それが、半年前からすべて変わった。
母は以前とは別人のようで、何をするにも億劫そうにして、朝から晩まで部屋に閉じこもっていることが増えた。食事を作ることも、洗濯をすることも、いつの間にか私の役目になっていた。
学校に通いながら、アルバイトをして、家のこともして、母の面倒も見る。それでも、父からの仕送りがあるうちは、どうにか生活を続けていくことができた。
溜息だけを残して扉から離れ、冷蔵庫を開けると、中にはタッパーに詰まった残り物と、飲みかけのペットボトル、賞味期限の近い牛乳、それから卵が数個あるだけだった。夕飯には少し足りない。やっぱり、買い物には行かなければならない。これから先も、父からの仕送りが続くとは限らない。
冷蔵庫の明かりに照らされた食材をぼんやり眺めながら、今財布の中にいくら入っていたか考えていると、カレンダーの下にある電話が鳴った。
突然の着信に、私は少しだけ肩を震わせた。こんな時間に電話がかかってくることなど、ほとんどない。
冷蔵庫の扉を閉め、受話器を取る。
「もしもし」
『突然のお電話、申し訳ありません。神奈川県警の三浦と言う者ですが、曾根田悠馬さんのご自宅で間違いないでしょうか?』
受話器から聞こえてきたその声は、警察からの電話とは思えないほど穏やかで、まだ若そうな女性の声だった。
「……はい」
『悠馬さんとは、どのようなご関係でしょうか?』
「私の兄ですけど……」
そう答えると、電話の向こうで短い沈黙があった。
『そうですか。実は先ほど、悠馬さんを痴漢の現行犯で逮捕しまして』
「……え?逮捕……?」
何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
『はい。現在、警察署で事情を確認しております。ご家族の方にご連絡を差し上げた次第です。申し訳ありませんが署までお越しいただきたいのですが、お父様かお母様はご在宅でしょうか』
「えっとー……」
何を答えればいいのか分からず、私は助けを求めるように母のいる部屋へ視線を向けた。けれど、襖はいつまで経っても開かない。その向こうからは何の気配もなく、ただ静かに閉ざされたままだった。頼りたいのに、頼ることすらできない。そんなやり場のない苛立ちを押し殺しながら、私は口を開いた。
「すみません。母はまだ仕事から帰ってきていなくて……。後でかけ直してもいいですか?」
渋るように唸った三浦だったが、やがて小さく息を吐いて「分かりました」と答えた。
『では、後ほどこちらからもう一度ご連絡します。ただ、できれば本日中に一度、署まで来ていただけると助かります』
「はい……分かりました」
念のために住所と連絡先を淡々と告げられ、それを端に置かれたメモ用紙へ書き込む。続けて、最近、何か変わった様子があったとか、普段と違う行動をしていたとか、簡単な質問をされた。しかし、いくら考えてみても、これといって思い当たることはなかった。
年の離れた悠馬は今年で二十一になる。大学に通っているはずだった。少なくとも、母から聞かされていた話ではそうだった。けれど、ここ三ヶ月ほどは家に帰ってくることも少なくなり、私自身、悠馬と顔を合わせる機会はほとんどなかった。
最後に話したのは、いつだっただろう。思い出そうとしてみても、すぐには出てこなかった。
「お兄ちゃん、最近どうしてるの?」
そう尋ねたことはある。けれど母は、そのたびに決まって「悠馬は大丈夫だから」とだけ答えた。何が大丈夫なのか、そのときは深く考えなかった。私も学校やアルバイトで忙しかったし、家のことを考えるだけで精一杯で、悠馬にまで目を向ける余裕はなかった。
母と父が離婚してから、家の中はずっと妙な緊張感に包まれていた。父からの仕送りがなければ生活できないのに、その父を母は憎んでいる。そんな矛盾を抱えたまま、半年が過ぎていた。だから、悠馬のことも、きっと同じように何かを抱えているのだと思っていた。まさか、それがこんな形で知らされるとは思わなかった。
『それでは、後ほど改めてお電話します』
「はい」
通話が切れ、プツッ、と小さな音がして、家の中に静寂が戻る。
しばらく受話器を耳に当てたまま、私は動けなかった。
兄妹というよりも友人に近いような距離感だった。
小さい頃から、悠馬とはあまり一緒に過ごした記憶がない。年が離れていたせいもある。私がまだ小学生だった頃には、悠馬はもう中学生で、私が中学生になる頃には、兄は高校生になっていた。
それでも、家にいるときは、いつもどこかに悠馬の気配があった。
玄関に脱ぎ捨てられたスニーカー。
洗面所に置かれた歯ブラシ。
冷蔵庫を開けると、いつの間にかなくなっているプリン。
そんな些細なものばかり。だから、顔を合わせることが減ってからも、私はそれほど気にしていなかった。大学生になれば、家に帰ってくる時間が減るのは当たり前だと思っていたし、私だってアルバイトが忙しくなれば、家族と食卓を囲むことは少なくなった。
信じられなかった。
いや、正確には、信じたくなかった。
悠馬がそんなことをする人間だと思ったことは一度もない。もちろん、兄のことを何でも知っているわけではない。ここ数ヶ月、ほとんど会話すらしていなかったのだから、そんなことを言う資格がないのも分かっている。
それでも、あの兄が。
誰かにそんなことをする姿だけは、どうしても想像できなかった。
やがて、受話器をゆっくりと戻し、壁に掛けられた時計を見る。午後七時を少し回ったところだった。早く支払いを済ませなければ。
私は最後の一枚を抜き取り、しばらく郵便受けの中を隅々まで覗き込んでいた。
もう何もない。
それを確かめてから、鍵を取り出した。冷たい鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。ガチャ、と乾いた音がした。
玄関を開けると、冷蔵庫が、壁の向こうから聞こえてくる遠い機械音のように低く唸っていた。電気は点いている。蛇口をひねれば水も出る。今日のところは、それで十分だった。風呂に湯を張れば、この冬の寒さにすっかり冷えた身体も、少しは元に戻るだろう。
そう思うと、張りつめていたものが、ほんの少しだけ緩んだ。
ローファーを脱ぎ、軋む廊下を進んで、鞄を下ろす。居間から襖一枚隔てた母の部屋を見ると、扉は閉まっていた。いつもなら、帰ってきたことを知らせるために声をかける。けれど今日は、なぜかすぐには声が出なかった。
眠っているのか。起きているのか。それとも、また何も聞こえないふりをしているのか。その答えは襖を開ければ直ぐに分かるのに、しばらく立ったまま、閉じた扉を見つめていた。
昨夜の母は、ひどく荒れていた。珍しく台所に立ち、料理をしている姿を見て、私は少し嬉しくなった。鍋から立ちのぼる湯気も、包丁がまな板を叩く音も、久しぶりに見る母の背中も、何もかもが懐かしかった。今日は、少し違うのかもしれない。そんなことを思った。だから、後ろからそっと覗き込んで、「何作ってるの?」と声をかけた。
しかし、母は振り返らなかった。代わりに、包丁を握る手が止まった。その瞬間、胸の奥で膨らんでいた小さな期待が、音もなく萎んでいくのが分かった。
母はしばらく黙ったあと、低い声で何かを呟いた。聞き取れなかった。聞き返すこともできなかった。ただ、握られた包丁だけが、妙にはっきりと目に焼きついていた。
いったい、何がいけなかったのだろう。
声をかけたことだろうか。
帰ってきたことだろうか。
それとも、嬉しそうに母の背中を見ていたことさえ、いけなかったのだろうか。
床に散らかった皿の破片をひとつずつ拾い集めながら考えていると、指先に触れた欠片が薄皮を裂いた。痛い、と感じるより先に、母に見られていないことにほっとした。
私はただ、久しぶりに母が料理をしているのが嬉しかっただけだった。
それだけだったはずなのに。
どうして、あんなことになったのだろう。
絆創膏を貼った指先に触れる。その痛みで、ようやく現実に引き戻された。小さく息を吸う。
「……ただいま」
返事はなかった。もう一度、今度は少しだけ声を張る。
「ただいま、お母さん」
「……ああ、美幸?お帰りなさい」
衣擦れの音と共に、酒焼けしたような、ひどく掠れた声が返ってきた。真夜中に突然、ヒステリックに叫びながら何枚もの皿を叩き割っていたせいか、その声にはまだ昨夜の名残があった。
「ねえ。夕飯の買い出しと、電気とか水道代の支払いに行きたいんだけど、通帳ってどこに仕舞ったの?今日って確か、お父さんからの仕送りがある日だよね?」
通帳の場所を尋ねただけなのに、扉の向こうからは返事ではなく、「博司さん」と囁くような声が聞こえてくるだけだった。
離婚して以来、母は時々、こうして父の名前を口にするようになった。精神の均衡を欠いている今の母に、何を聞いても、きっとまともな答えは返ってこない。母だって、きっと苦しいのだ。
裕福な暮らしとまではいかなかったが、以前は、少なくとも今日のように請求書の一枚一枚に怯える必要はなかった。
父が家にいた頃は、家賃も光熱費も、食費も、私にはほとんど関係のないものだった。私も母も、今ほど金銭のことを気にしてはいなかったように思う。母が働かなくとも、美味しい食事にありつけたし、欲しいものがあれば、多少の遠慮はしながらも買うことができた。それが、半年前からすべて変わった。
母は以前とは別人のようで、何をするにも億劫そうにして、朝から晩まで部屋に閉じこもっていることが増えた。食事を作ることも、洗濯をすることも、いつの間にか私の役目になっていた。
学校に通いながら、アルバイトをして、家のこともして、母の面倒も見る。それでも、父からの仕送りがあるうちは、どうにか生活を続けていくことができた。
溜息だけを残して扉から離れ、冷蔵庫を開けると、中にはタッパーに詰まった残り物と、飲みかけのペットボトル、賞味期限の近い牛乳、それから卵が数個あるだけだった。夕飯には少し足りない。やっぱり、買い物には行かなければならない。これから先も、父からの仕送りが続くとは限らない。
冷蔵庫の明かりに照らされた食材をぼんやり眺めながら、今財布の中にいくら入っていたか考えていると、カレンダーの下にある電話が鳴った。
突然の着信に、私は少しだけ肩を震わせた。こんな時間に電話がかかってくることなど、ほとんどない。
冷蔵庫の扉を閉め、受話器を取る。
「もしもし」
『突然のお電話、申し訳ありません。神奈川県警の三浦と言う者ですが、曾根田悠馬さんのご自宅で間違いないでしょうか?』
受話器から聞こえてきたその声は、警察からの電話とは思えないほど穏やかで、まだ若そうな女性の声だった。
「……はい」
『悠馬さんとは、どのようなご関係でしょうか?』
「私の兄ですけど……」
そう答えると、電話の向こうで短い沈黙があった。
『そうですか。実は先ほど、悠馬さんを痴漢の現行犯で逮捕しまして』
「……え?逮捕……?」
何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
『はい。現在、警察署で事情を確認しております。ご家族の方にご連絡を差し上げた次第です。申し訳ありませんが署までお越しいただきたいのですが、お父様かお母様はご在宅でしょうか』
「えっとー……」
何を答えればいいのか分からず、私は助けを求めるように母のいる部屋へ視線を向けた。けれど、襖はいつまで経っても開かない。その向こうからは何の気配もなく、ただ静かに閉ざされたままだった。頼りたいのに、頼ることすらできない。そんなやり場のない苛立ちを押し殺しながら、私は口を開いた。
「すみません。母はまだ仕事から帰ってきていなくて……。後でかけ直してもいいですか?」
渋るように唸った三浦だったが、やがて小さく息を吐いて「分かりました」と答えた。
『では、後ほどこちらからもう一度ご連絡します。ただ、できれば本日中に一度、署まで来ていただけると助かります』
「はい……分かりました」
念のために住所と連絡先を淡々と告げられ、それを端に置かれたメモ用紙へ書き込む。続けて、最近、何か変わった様子があったとか、普段と違う行動をしていたとか、簡単な質問をされた。しかし、いくら考えてみても、これといって思い当たることはなかった。
年の離れた悠馬は今年で二十一になる。大学に通っているはずだった。少なくとも、母から聞かされていた話ではそうだった。けれど、ここ三ヶ月ほどは家に帰ってくることも少なくなり、私自身、悠馬と顔を合わせる機会はほとんどなかった。
最後に話したのは、いつだっただろう。思い出そうとしてみても、すぐには出てこなかった。
「お兄ちゃん、最近どうしてるの?」
そう尋ねたことはある。けれど母は、そのたびに決まって「悠馬は大丈夫だから」とだけ答えた。何が大丈夫なのか、そのときは深く考えなかった。私も学校やアルバイトで忙しかったし、家のことを考えるだけで精一杯で、悠馬にまで目を向ける余裕はなかった。
母と父が離婚してから、家の中はずっと妙な緊張感に包まれていた。父からの仕送りがなければ生活できないのに、その父を母は憎んでいる。そんな矛盾を抱えたまま、半年が過ぎていた。だから、悠馬のことも、きっと同じように何かを抱えているのだと思っていた。まさか、それがこんな形で知らされるとは思わなかった。
『それでは、後ほど改めてお電話します』
「はい」
通話が切れ、プツッ、と小さな音がして、家の中に静寂が戻る。
しばらく受話器を耳に当てたまま、私は動けなかった。
兄妹というよりも友人に近いような距離感だった。
小さい頃から、悠馬とはあまり一緒に過ごした記憶がない。年が離れていたせいもある。私がまだ小学生だった頃には、悠馬はもう中学生で、私が中学生になる頃には、兄は高校生になっていた。
それでも、家にいるときは、いつもどこかに悠馬の気配があった。
玄関に脱ぎ捨てられたスニーカー。
洗面所に置かれた歯ブラシ。
冷蔵庫を開けると、いつの間にかなくなっているプリン。
そんな些細なものばかり。だから、顔を合わせることが減ってからも、私はそれほど気にしていなかった。大学生になれば、家に帰ってくる時間が減るのは当たり前だと思っていたし、私だってアルバイトが忙しくなれば、家族と食卓を囲むことは少なくなった。
信じられなかった。
いや、正確には、信じたくなかった。
悠馬がそんなことをする人間だと思ったことは一度もない。もちろん、兄のことを何でも知っているわけではない。ここ数ヶ月、ほとんど会話すらしていなかったのだから、そんなことを言う資格がないのも分かっている。
それでも、あの兄が。
誰かにそんなことをする姿だけは、どうしても想像できなかった。
やがて、受話器をゆっくりと戻し、壁に掛けられた時計を見る。午後七時を少し回ったところだった。早く支払いを済ませなければ。



