キュンキュンしてよ


 今日は玲衣くんが実習出て遅くなるので、ぼくは1人で帰っていたら目の前に見知った背中を見つけた。

 トットットッ。

「はーく——ん!」

 はーくんの肩をポンっと叩く。

「後ろから走る音が聞こえてると思ったら伊吹だったのか」
 足を止めてぼくを見て笑うはーくん。

「うんっ!はーくんの後ろ姿を見つけて走ってきたの」
「伊吹はもう帰る?一緒帰ろうか」

「うんっ!はーくんとお話ししたかったから会えて嬉しい」

 はっくんの隣にトンっと並んで歩き始める。

「そうそう。メールはもらってたけど改めて……」

 はーくんが足を止めてぼくに向かい合う。
 ぼくも足を止めてはーくんを見る。

「玲衣と正式に恋人おめでとう」
 目を細めて笑って祝福してくれる。

「へへっ。ありがとう」
「うん。伊吹のいい笑顔久々見れたね」

 そう言ってぼくの頭をくしゃっと撫でるはーくん。

「あの日、はーくんからお話聞いてもらえたおかげ。そして告白のアドバイスもありがと」
 はーくんにされるがままになりながら、そのまま話し続ける。

「まぁこれからも困ったらいつでもおいで。伊吹はぼくにとって可愛い弟みたいなものだからね」
 そう言って最後に頭をぽんぽんとしてくれた。

 また肩を並べて2人で歩き出す。

 玲衣くんとはまた違う伊吹にとって大切な人。

 (大事なお友達)

「ところで、壁ドンはできたのかい?」
 はーくんが笑いながら聞いてくる。

「うっ……」

 あの日のことを思い出して、ちょっと胸を押さえる。

 チラリとぼくを見るはーくん。

「なに?伊吹何をしたんだい?」
 聞く前からすでに笑ってるはーくん。

「もぉ。なんでいぶきが何かした前提なの?」

 ちょっとだけほっぺを膨らませてはーくんをみる。

「そりゃまあ。2人を見てきたぼくだからね。何かするなら伊吹でしょ」
 そう言って笑ってる。

「あのね……。玲衣くんは告白してくれたのに、伊吹全く気が付いてなかったの……」
 恥ずかしくて小さく伝える。

「ぶははは……。いぶっ、伊吹!それはっ……」

 足を止めて膝に手をおいて大爆笑を始めるはーくん。

 恥ずかしくなって、はーくんの背中をぺしぺしと叩く。

「もぉ。はーくん笑いすぎだよぉ」

 ぼくも恥ずかしくなる。

「ごめん。ごめん。あまりに伊吹が面白くて」
 そう言いながらもまだ笑ってるはーくん。

「まぁ。でもそれも玲衣と伊吹らしいよ」
 はーくんはそう言いながら1人で頷いてる。

 (あっ、そ——だ!)

 はーくんに見せようと思ってカバンをゴソゴソとする。

「あのね、はーくんこれ見て!」

 じゃ——ん。

 と口で言いながらはーくんにスマホを見せる。

「ん?スマホ?あっ、ストラップがついてる」
 青いガラス玉のストラップがゆらゆらと揺れてる。

「そうなの!これね!いぶきが玲衣くんみたいと思って買ったの」
 そう言ってはーくんの目線にストラップを持っていく。

「触っていいの?」

 ぼくに確認してくるはーくん。

「うん!あのね、光に当てるとキラキラするの。見て」

 スマホごとはーくんに渡す。

 はーくんは、「ありがとう」と言ってスマホを受け取り、ストラップを手に取り光にガラス玉をあてる。

「本当だね。キラキラして青がより引き立つね」
「ね!これ玲衣くんみたいだよね」

 はーくんが分かってくれたことが嬉しい。
 弾んだ声が出る。

「見せてくれてありがとう」
 はーくんはスマホをぼくに返してくれた。

「うん。伊吹の中で玲衣がこう見えてるのはよくわかる。伊吹だけの玲衣だね」

 はーくんはそう言ってニコリと笑ってくれた。

「うん!玲衣くんみたいに綺麗で凛としててキラキラ光ってるの」
「伊吹にだけ見えてる姿だね」

 そう言ってはーくんはまた笑い出した。


 また2人で肩を並べて歩き出す。

「はーくん今日はレッスンある?」
「うん。今日はこれから夜までレッスンだよ」

(はーくんも忙しいな)

「はーくんも玲衣くんもすごいね」

 ポツリとそう呟く。

 はーくんがぼくの方を向く。

「ん?」
 首を傾げるはーくん。

「2人とも夢に向かって頑張ってるなぁって」

「伊吹だってそうだよ。ぼくも伊吹が好きなことを突き進めてる姿に勇気をもらってるよ」
 はーくんは優しい声でそう言ってくれた。

「へへっ。はーくんにそう言ってもらえるの嬉しいな」
 少しだけ照れくさくて靴に目線を落とす。

「伊吹と玲衣2人がいるからぼくも頑張れてるからね」
 隣から優しい声が聞こえる。

「いぶきも!同じ!はーくんは大切なお友達でパワーもらえてる」
 顔をあげてはーくんにそう伝える。

 (そ——だ!さっき聞きたかったこと)

「はーくん明日の夜もレッスン?」
「ううん。明日はないよ」

 首を振るはーくん。

「じゃあ明日の夜は3人でご飯食べよっ!」
 はーくんにそう声をかける。

「3人で?」
「うんっ!いぶきが作る!」

 はーくんがチラリとぼくをみて優しく笑った。

「じゃあ。お邪魔しようかな」
「玲衣くんのお部屋で食べよう——!はーくん何食べたい?」

 そんな話をしながらはーくんとマンションまでの帰り道を歩いた。

 (はーくんに明日はお腹いっぱいご飯食べてもらおう)