週末をはさみ、テスト結果発表の日がきた。
北見は朝の電車に揺られながら、テスト最終日のことを思い出していた。
ーーアイツ、具合悪そうだったけど……。
アルコールのような匂いがしたのは気の所為だったのか。
いずれにしろ今日は登校してくるだろう。知ったことかと思考を閉じる。
女子からのLINEが届いた。
『北見くんトップだったよ!』
その一文にほっとする。
写真も添えられていて、総合点では、北見がトップの840点、神楽が二位の830点。やはり神楽の点数は高く、ギリギリで逃げ切ったことにヒヤっとはするが、自分の努力の成果に満足した。
学校につくと、教室の前の廊下にいつものように結果が張り出されていた。
人だかりが出来ている。
今回は、北見が一位。神楽が二位、そして前回トップだった吉井が三位に下がった。
「やっぱ神楽くん、超秀才だったじゃん!」
「北見とツートップ確定だな」
「おー、北見来た。お前一位に返り咲きだな。やっぱすげーわ」
佐藤が北見を見つけて声をかけてきた。
「そりゃ、死ぬほど努力した」
少し笑って返すと、佐藤は「それができるのがすげーわ」と尊敬のまなざしを向けてくる。
科目別にも学年20位までが発表されていた。
ちらっと見ると、現国は一位神楽、二位北見。古文は一位神楽、二位北見。漢文は一位神楽、二位北見。……え?
北見は嫌な予感がして、成績表を見て回った。
心臓がぎゅっと縮まる。恥ずかしさのあまり、顔まで熱くなる。
10科目中、北見が一位になっているのは、二科目だけだった。残りは神楽が一位。
そして、神楽が一位を取れなかった物理と数学は、テスト最終日、神楽が倒れそうになっていた日の科目だった。しかも、物理も数学も、神楽は20位にすら入っていない。
結局神楽は、物理と数学で点数を落としただけで、他はすべて北見を圧倒していた。
くそっ!
北見は唇をかみしめる。
自分の努力が足りなかった。いや、違う。
最初から圧倒的に能力が違っている。
神楽はサボってはいなかったが、必死に勉強をしている様子もなかった。
あくまで、人並みの努力。
ーー早くこの場から離れないと。
屈辱と嫉妬で変になりそうだった。
「でも神楽も凄いよなー。いやマジ、自己紹介の時点で、こいつ頭よさそうだと思ったけどさ。でもそんな神楽を下したお前、やっぱすげー」
佐藤が屈託なく笑っている。
北見は、
「まーでも、結構ヤバい。次、負けるかもな」
賞賛をかわし、教室に入った。もっと努力しなければ、と、強張った手で消しゴムにきつく親指を立てる。
神楽はこの成績を見てどう思うだろう?
そして、父はどう反応するだろう。
背筋が寒くなる。恐怖がのしかかり息が苦しくなる。
……負けたら罰。
北見は口元を押さえて目を瞑る。
古民家。
手首の痛み。
居場所を失う恐怖。
もし負けたらオレは……。
「北見、大丈夫? 体調悪い?」
通りすがりのクラスメイトに声をかけられた。
思い出しかけた記憶のようなものが、ふっと消える。
「あ、いや、……眠くて」
笑ったつもりなのに、顔がこわばった。
* * *
一限目が始まっても隣の席は空いたままだった。
ーー神楽は一人暮らしだ。もし、一人で倒れていたら……?
ニ限目の前に担任に聞いたら「お父さんから連絡があったから大丈夫だよ」と言われた。
余計な心配をさせられた。
でも……結果発表の騒ぎの中に神楽が登場しなくてよかった。
ほっとした自分自身に、北見はプライドがえぐられるのを感じた。
北見は朝の電車に揺られながら、テスト最終日のことを思い出していた。
ーーアイツ、具合悪そうだったけど……。
アルコールのような匂いがしたのは気の所為だったのか。
いずれにしろ今日は登校してくるだろう。知ったことかと思考を閉じる。
女子からのLINEが届いた。
『北見くんトップだったよ!』
その一文にほっとする。
写真も添えられていて、総合点では、北見がトップの840点、神楽が二位の830点。やはり神楽の点数は高く、ギリギリで逃げ切ったことにヒヤっとはするが、自分の努力の成果に満足した。
学校につくと、教室の前の廊下にいつものように結果が張り出されていた。
人だかりが出来ている。
今回は、北見が一位。神楽が二位、そして前回トップだった吉井が三位に下がった。
「やっぱ神楽くん、超秀才だったじゃん!」
「北見とツートップ確定だな」
「おー、北見来た。お前一位に返り咲きだな。やっぱすげーわ」
佐藤が北見を見つけて声をかけてきた。
「そりゃ、死ぬほど努力した」
少し笑って返すと、佐藤は「それができるのがすげーわ」と尊敬のまなざしを向けてくる。
科目別にも学年20位までが発表されていた。
ちらっと見ると、現国は一位神楽、二位北見。古文は一位神楽、二位北見。漢文は一位神楽、二位北見。……え?
北見は嫌な予感がして、成績表を見て回った。
心臓がぎゅっと縮まる。恥ずかしさのあまり、顔まで熱くなる。
10科目中、北見が一位になっているのは、二科目だけだった。残りは神楽が一位。
そして、神楽が一位を取れなかった物理と数学は、テスト最終日、神楽が倒れそうになっていた日の科目だった。しかも、物理も数学も、神楽は20位にすら入っていない。
結局神楽は、物理と数学で点数を落としただけで、他はすべて北見を圧倒していた。
くそっ!
北見は唇をかみしめる。
自分の努力が足りなかった。いや、違う。
最初から圧倒的に能力が違っている。
神楽はサボってはいなかったが、必死に勉強をしている様子もなかった。
あくまで、人並みの努力。
ーー早くこの場から離れないと。
屈辱と嫉妬で変になりそうだった。
「でも神楽も凄いよなー。いやマジ、自己紹介の時点で、こいつ頭よさそうだと思ったけどさ。でもそんな神楽を下したお前、やっぱすげー」
佐藤が屈託なく笑っている。
北見は、
「まーでも、結構ヤバい。次、負けるかもな」
賞賛をかわし、教室に入った。もっと努力しなければ、と、強張った手で消しゴムにきつく親指を立てる。
神楽はこの成績を見てどう思うだろう?
そして、父はどう反応するだろう。
背筋が寒くなる。恐怖がのしかかり息が苦しくなる。
……負けたら罰。
北見は口元を押さえて目を瞑る。
古民家。
手首の痛み。
居場所を失う恐怖。
もし負けたらオレは……。
「北見、大丈夫? 体調悪い?」
通りすがりのクラスメイトに声をかけられた。
思い出しかけた記憶のようなものが、ふっと消える。
「あ、いや、……眠くて」
笑ったつもりなのに、顔がこわばった。
* * *
一限目が始まっても隣の席は空いたままだった。
ーー神楽は一人暮らしだ。もし、一人で倒れていたら……?
ニ限目の前に担任に聞いたら「お父さんから連絡があったから大丈夫だよ」と言われた。
余計な心配をさせられた。
でも……結果発表の騒ぎの中に神楽が登場しなくてよかった。
ほっとした自分自身に、北見はプライドがえぐられるのを感じた。



