結果主義の皆様へ

 電車の来る前、何度か鞄の中を確認した。受験票。ペンケースの中、二本のシャーペン、消しゴム、芯。身分証。ICカードと現金。
模試にも今日と同じものを持ってたはず。なのに確認せずにいられなかった。
 目的の駅に着いてからも身体に力が入ったまま。自販機で温かいコーヒーも自分に買ってやった。それでも変わらなかった。
 会場について指定された席に着く。
目を閉じて深呼吸をしてみた。周りの受験生は見ず、一瞬だけ昨日のことも忘れてみる。
監督者の指示通り携帯、参考書をしまい、いよいよ机上には筆記用具と問題用紙、解答用紙だけになった。

 そして、

「始め」

 その合図と同時に一斉に一ページ目がさらっとめくる音が会場をつんざいた。
その後すぐに、周りシャープペンシルが紙の上を滑っていく競い合いが始まる。
前の人の腕が細かく、速く、刻みながら動く。
次第に自分の胸の音が脳に響く。

 見下ろせばただ自分の手だけ固まって震えてた。
机上のシャーペンを掴もうとしたが濡れてるせいで掴めなかった。
それでも焦って問題用紙を開こうとした。今まで数え切れないほど問題冊子を開いてきた。解いてきた。今日この日まで。

 なのにそこに印刷される文字の羅列は、なにかの呪文に見えた。