*
「彼氏できた!」
数人で固まってお昼ご飯を食べていた時、友達の一人が喜び勇んでスマホを掲げた。
「え-。誰誰? うちらの知ってる人?」
わらわらと皆がスマホを覗き込む。
「きっと知らないよ。他校生だから」
スマホの中では、丸刈りの少年が人の良さそうな笑みを浮かべていた。
「高校球児?」
あたしはそう尋ねた。よく見ると、野球のユニフォームのようなものを着ていたから。
「うん! すっごく野球うまいんだよ!」
「へえ、カッコいいね」
「うん。去年の夏ね、まだ一年生だったのに甲子園出たんだよ」
「え、すご!」
あたしは感心した。ずいぶんとすごい選手と付き合えたものだ。
あたしがまじまじとスマホを見ていると、友達はあたしの腕に腕を絡ませてきた。
「ねー。凪はー?」
「ん? あたしが何?」
「もー。凪は好きな人いないの? ってこと!」
友達はあたしの腕をばんばんと叩いた。
「好きな人……」
当然のようにあたしの頭に浮かんだのは大川くんだった。
「あ、今誰か思い浮かべたでしょ! 誰だよー」
きゃらきゃらと笑う友達をいなしながら、あたしは妄想した。
性格の良い大川くんと付き合ったら、こんなふうに自慢できるかな。「わあ、いい人じゃん!」って、言ってもらえるかな。
友達があたしの腕をぶんぶんと振り回した。「ねえ、誰誰、教えてよ」
あたしはにこっと笑顔を見せた。
「内緒!」
そう答えつつも、あたしは「するか、告白!」と気が盛り上がってきていた。
「大川くん、あたしと付き合ってください!」
言った。ついに言った。
放課後、皆が帰ったあとの夕暮れの教室で。あたしは一人帰り支度をしていた大川くんに告白をした。
友達の彼氏の話で盛り上がったあと、「やっぱり夏休みは彼氏と遊びに行きたいよね」という話になった。今は六月初めだ。夏休みまではあと一ヶ月ちょっと。焦ったあたしは、早々に告白することにしたのだ。
勢い込んで告白してはみたものの、あたしは誰かに告白するのは初めてだった。怖くて彼の顔を見ていられなくなって俯いてしまった。あたしの心臓は、ばくばくと音を立てていた。
嫌われてはいないと思う。嫌っていたら、あんな親切に部活の相談には載ってくれないだろう。
でも、大川くんは誰にでも優しいのだ。あたしにだけ特別っていうわけじゃない。
「まずは友達から」と言われることも覚悟していた。それでもいいと。しかし。
「……嬉しいよ、町田さん」
「えっ」
顔を上げると、そこには頬をうっすら紅潮させた大川くんが立っていた。
大川くんは少し口ごもりながら言ってくれた。
「実は俺も町田さんのこと前から気になってて」
「そうなの?」
「うん。部活選ぶだけなのに、すごく真剣で。真面目な人だなって」
それは単に楽をしたかっただけなんだけど。 そう思ったことは口には出さなかった。
「そんな……。普通のことだよ。部活は大事だもん」
「うん。普通のことを普通って言える、そういう子ってあまりいない。だから、なんていうか、俺の理想のタイプ」
大川くんは恥ずかしそうに微笑んだ。
やった! 両想いだ!
あたしは拳を振り上げた。心の中でだが。
大川くんははにかみながら続けた。
「もちろんオーケーだよ。これからよろしくね」
「うん! こちらこそ!」
こうして、あたしは大川くんとお付き合いを始めることになった。
理想の彼氏ができた。嬉しい!
あたしたちはその日、一緒に帰った。大川くんは意外と博学で、話していて楽しかった。 大川くん、いろんなこと知ってて、カッコいい!
翌日、あたしは友達たちに大川くんと付き合い始めたことを報告した。大川くんがいる教室では気恥ずかしいから、お昼休みに外のベンチに行ってから打ち明けた。
「へえ、大川くんか! 意外だけど、なんか納得」
「いいじゃん、大川くん。優しいよね。面倒見もいいし」
「イイ男捕まえたじゃん、凪!」
「ありがとー!」
友達に祝福されて嬉しくて、あたしは彼女たちに抱きついた。皆大川くんの性格の良さをわかってくれていた。あたしは気分が良くなった。
やっぱり男は顔じゃないよ! 性格の良さこそ重要だよね。まさしく大川くんは理想の彼氏!
「理想の彼氏」その時のあたしは、気分が高揚していてそれしか考えていなかった。
「彼氏できた!」
数人で固まってお昼ご飯を食べていた時、友達の一人が喜び勇んでスマホを掲げた。
「え-。誰誰? うちらの知ってる人?」
わらわらと皆がスマホを覗き込む。
「きっと知らないよ。他校生だから」
スマホの中では、丸刈りの少年が人の良さそうな笑みを浮かべていた。
「高校球児?」
あたしはそう尋ねた。よく見ると、野球のユニフォームのようなものを着ていたから。
「うん! すっごく野球うまいんだよ!」
「へえ、カッコいいね」
「うん。去年の夏ね、まだ一年生だったのに甲子園出たんだよ」
「え、すご!」
あたしは感心した。ずいぶんとすごい選手と付き合えたものだ。
あたしがまじまじとスマホを見ていると、友達はあたしの腕に腕を絡ませてきた。
「ねー。凪はー?」
「ん? あたしが何?」
「もー。凪は好きな人いないの? ってこと!」
友達はあたしの腕をばんばんと叩いた。
「好きな人……」
当然のようにあたしの頭に浮かんだのは大川くんだった。
「あ、今誰か思い浮かべたでしょ! 誰だよー」
きゃらきゃらと笑う友達をいなしながら、あたしは妄想した。
性格の良い大川くんと付き合ったら、こんなふうに自慢できるかな。「わあ、いい人じゃん!」って、言ってもらえるかな。
友達があたしの腕をぶんぶんと振り回した。「ねえ、誰誰、教えてよ」
あたしはにこっと笑顔を見せた。
「内緒!」
そう答えつつも、あたしは「するか、告白!」と気が盛り上がってきていた。
「大川くん、あたしと付き合ってください!」
言った。ついに言った。
放課後、皆が帰ったあとの夕暮れの教室で。あたしは一人帰り支度をしていた大川くんに告白をした。
友達の彼氏の話で盛り上がったあと、「やっぱり夏休みは彼氏と遊びに行きたいよね」という話になった。今は六月初めだ。夏休みまではあと一ヶ月ちょっと。焦ったあたしは、早々に告白することにしたのだ。
勢い込んで告白してはみたものの、あたしは誰かに告白するのは初めてだった。怖くて彼の顔を見ていられなくなって俯いてしまった。あたしの心臓は、ばくばくと音を立てていた。
嫌われてはいないと思う。嫌っていたら、あんな親切に部活の相談には載ってくれないだろう。
でも、大川くんは誰にでも優しいのだ。あたしにだけ特別っていうわけじゃない。
「まずは友達から」と言われることも覚悟していた。それでもいいと。しかし。
「……嬉しいよ、町田さん」
「えっ」
顔を上げると、そこには頬をうっすら紅潮させた大川くんが立っていた。
大川くんは少し口ごもりながら言ってくれた。
「実は俺も町田さんのこと前から気になってて」
「そうなの?」
「うん。部活選ぶだけなのに、すごく真剣で。真面目な人だなって」
それは単に楽をしたかっただけなんだけど。 そう思ったことは口には出さなかった。
「そんな……。普通のことだよ。部活は大事だもん」
「うん。普通のことを普通って言える、そういう子ってあまりいない。だから、なんていうか、俺の理想のタイプ」
大川くんは恥ずかしそうに微笑んだ。
やった! 両想いだ!
あたしは拳を振り上げた。心の中でだが。
大川くんははにかみながら続けた。
「もちろんオーケーだよ。これからよろしくね」
「うん! こちらこそ!」
こうして、あたしは大川くんとお付き合いを始めることになった。
理想の彼氏ができた。嬉しい!
あたしたちはその日、一緒に帰った。大川くんは意外と博学で、話していて楽しかった。 大川くん、いろんなこと知ってて、カッコいい!
翌日、あたしは友達たちに大川くんと付き合い始めたことを報告した。大川くんがいる教室では気恥ずかしいから、お昼休みに外のベンチに行ってから打ち明けた。
「へえ、大川くんか! 意外だけど、なんか納得」
「いいじゃん、大川くん。優しいよね。面倒見もいいし」
「イイ男捕まえたじゃん、凪!」
「ありがとー!」
友達に祝福されて嬉しくて、あたしは彼女たちに抱きついた。皆大川くんの性格の良さをわかってくれていた。あたしは気分が良くなった。
やっぱり男は顔じゃないよ! 性格の良さこそ重要だよね。まさしく大川くんは理想の彼氏!
「理想の彼氏」その時のあたしは、気分が高揚していてそれしか考えていなかった。



