侑斗を待っている間に、段々と気持ちが落ち着いてくる。なんだか大袈裟に騒いでしまったみたいで、恥ずかしくなって彰良はガリガリと頭を掻いた。
ふと窓の外を見れば、家の近くの電灯に照らされて、侑斗が走ってくる姿が目に入る。急いで玄関まで迎えに行けば、汗だくで息を切らせる侑斗の姿があった。
「侑斗、びしょびしょじゃん」
「夜なのにくっそ暑いんだよ! それより呪われたって……」
「その話は後でいいから、シャワーだけでも浴びろよ」
「いや、そんなことより……」
侑斗の腕を掴んでリビングに行けば、ちょうど姉が風呂から出て来た所だった。
「母さん、シャワー貸してやっていい?」
「あら、侑斗くんじゃない。もちろんいいわよ」
母親の言葉に、父親が勢いよく振り返った。侑斗をその視界に納めると、目を輝かせて近づいてくる。
「おお、君が噂の彰良の友だちか! いつも彰良が世話になっているね!」
「こ、こんばんは……」
これからもよろしく頼むよ! なんて父親にハイテンションで手を握られ、侑斗がびびって仰け反っている。正直恥ずかしいからやめて欲しいのだが……これを好機とばかりに戸惑う侑斗を引きずって脱衣場に押し込めば、大人しくシャワーを浴びに風呂に入っていった。
「シャワーなんて浴びてる場合じゃないんだけど」
少しブスくれた侑斗が、髪の毛を雑に拭きながら彰良の部屋に入ってくる。彰良のTシャツは少しばかり小さいのか、動くたびにおへそがチラチラと見えていた。
「でも汗でびしょびしょなのはこっちも困るだろ」
そう言えば、侑斗はそれはそうか……と納得する。その後ハッとして、いや、と声を出した。
「呪いの話! 身体に痣が出て来たって、冗談じゃないんだろ?」
冗談ではない。冗談ではないのだが……まるで大事件のように言われると、彰良は少しだけきまりが悪かった。
「これなんだけど……」
Tシャツを捲って、腰骨あたりに浮き出た痣を侑斗に見せる。それに、侑斗が息を呑む音が聞こえてきた。
「気にしなくていいよ。俺もあの時テンパってて、呪いとか言っちゃったけど……何処かにぶつけたのかもしれないしさ」
というか、そちらの方が有り得る話だと思う。自分の一言で侑斗を振り回してしまい、正直申し訳なかった。
侑斗は茶化すことなく、真剣な瞳で彰良の痣を見ている。そっと触れられて、ピクンと反応してしまった。
「ごめん、痛かった?」
「いや、痛くはないから、気にしないで」
侑斗に触れられたところが熱い。下半身に熱が集まっていく感覚がする。不味いと思って、クッションを足の間に押し込んだ。
「明日、静弥さんの所に相談に行こう」
「そう……だよな、うん」
呪いなのかただの怪我なのか分からないなら、確かめに行くしかない。自分ごとのように真剣になってくれる侑斗が嬉しくて、彰良は小さく下を向いて笑った。
「今日、彰良の家に泊まっていい?」
「え?」
突然の侑斗の提案に、一瞬思考が停止する。上手く返せず固まっていると、さらに侑斗が続けて来た。
「呪いのこと不安だろうから、今日は一緒にいてやりたいんだけど」
「ベッド、一つしか無いんだけど……」
というか、一晩も侑斗と一緒にいたら、自分がどうなってしまうか分からない。どうにか断ろうと言葉を探していたら、侑斗が不思議そうに首を傾げた。
「一緒に寝ればいいじゃん」
「いやいやいや、熱いだろ」
「クーラーつければ平気だろ」
一つのベッドで男が二人で仲良く寝るなんて、彰良の世界では有り得ないことだった。クラスの同級生も男同士でベタベタするのは気持ち悪いと言っていたし、それが世界の常識だと思っていたからだ。
「……まあ、彰良が俺と一緒に寝るのがイヤならしょうがないか。俺は床でも——」
「イヤなわけないだろ!」
彰良の突然の大声に、侑斗が驚いたように目を点にした。彰良も彰良で、無意識だったらしい。しまったとばかりに自分の口を手で抑えた。
結局その日は侑斗の提案通り、一つのベッドで二人仲良く寝ることになった。
本当に寝れるのかドキドキしていた彰良だったが、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立て始めた侑斗に、少し拍子抜けをしてしまった。
……いや、何考えてんだ俺は。何も起こるはずないだろ。
ベッドに顔を埋めれば、自分とは違う、けれど心地良い香りがフワリと鼻腔を掠めた。彰良が好きな、侑斗の優しい匂い。
もしかしたら一人では、不安に駆られ眠れなかったかもしれない。
温かい体温を横に感じて、何処か安心してしまう。目を瞑れば眠気が押し寄せて来て、だんだんと彰良の意識は薄れていった。
ふと窓の外を見れば、家の近くの電灯に照らされて、侑斗が走ってくる姿が目に入る。急いで玄関まで迎えに行けば、汗だくで息を切らせる侑斗の姿があった。
「侑斗、びしょびしょじゃん」
「夜なのにくっそ暑いんだよ! それより呪われたって……」
「その話は後でいいから、シャワーだけでも浴びろよ」
「いや、そんなことより……」
侑斗の腕を掴んでリビングに行けば、ちょうど姉が風呂から出て来た所だった。
「母さん、シャワー貸してやっていい?」
「あら、侑斗くんじゃない。もちろんいいわよ」
母親の言葉に、父親が勢いよく振り返った。侑斗をその視界に納めると、目を輝かせて近づいてくる。
「おお、君が噂の彰良の友だちか! いつも彰良が世話になっているね!」
「こ、こんばんは……」
これからもよろしく頼むよ! なんて父親にハイテンションで手を握られ、侑斗がびびって仰け反っている。正直恥ずかしいからやめて欲しいのだが……これを好機とばかりに戸惑う侑斗を引きずって脱衣場に押し込めば、大人しくシャワーを浴びに風呂に入っていった。
「シャワーなんて浴びてる場合じゃないんだけど」
少しブスくれた侑斗が、髪の毛を雑に拭きながら彰良の部屋に入ってくる。彰良のTシャツは少しばかり小さいのか、動くたびにおへそがチラチラと見えていた。
「でも汗でびしょびしょなのはこっちも困るだろ」
そう言えば、侑斗はそれはそうか……と納得する。その後ハッとして、いや、と声を出した。
「呪いの話! 身体に痣が出て来たって、冗談じゃないんだろ?」
冗談ではない。冗談ではないのだが……まるで大事件のように言われると、彰良は少しだけきまりが悪かった。
「これなんだけど……」
Tシャツを捲って、腰骨あたりに浮き出た痣を侑斗に見せる。それに、侑斗が息を呑む音が聞こえてきた。
「気にしなくていいよ。俺もあの時テンパってて、呪いとか言っちゃったけど……何処かにぶつけたのかもしれないしさ」
というか、そちらの方が有り得る話だと思う。自分の一言で侑斗を振り回してしまい、正直申し訳なかった。
侑斗は茶化すことなく、真剣な瞳で彰良の痣を見ている。そっと触れられて、ピクンと反応してしまった。
「ごめん、痛かった?」
「いや、痛くはないから、気にしないで」
侑斗に触れられたところが熱い。下半身に熱が集まっていく感覚がする。不味いと思って、クッションを足の間に押し込んだ。
「明日、静弥さんの所に相談に行こう」
「そう……だよな、うん」
呪いなのかただの怪我なのか分からないなら、確かめに行くしかない。自分ごとのように真剣になってくれる侑斗が嬉しくて、彰良は小さく下を向いて笑った。
「今日、彰良の家に泊まっていい?」
「え?」
突然の侑斗の提案に、一瞬思考が停止する。上手く返せず固まっていると、さらに侑斗が続けて来た。
「呪いのこと不安だろうから、今日は一緒にいてやりたいんだけど」
「ベッド、一つしか無いんだけど……」
というか、一晩も侑斗と一緒にいたら、自分がどうなってしまうか分からない。どうにか断ろうと言葉を探していたら、侑斗が不思議そうに首を傾げた。
「一緒に寝ればいいじゃん」
「いやいやいや、熱いだろ」
「クーラーつければ平気だろ」
一つのベッドで男が二人で仲良く寝るなんて、彰良の世界では有り得ないことだった。クラスの同級生も男同士でベタベタするのは気持ち悪いと言っていたし、それが世界の常識だと思っていたからだ。
「……まあ、彰良が俺と一緒に寝るのがイヤならしょうがないか。俺は床でも——」
「イヤなわけないだろ!」
彰良の突然の大声に、侑斗が驚いたように目を点にした。彰良も彰良で、無意識だったらしい。しまったとばかりに自分の口を手で抑えた。
結局その日は侑斗の提案通り、一つのベッドで二人仲良く寝ることになった。
本当に寝れるのかドキドキしていた彰良だったが、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立て始めた侑斗に、少し拍子抜けをしてしまった。
……いや、何考えてんだ俺は。何も起こるはずないだろ。
ベッドに顔を埋めれば、自分とは違う、けれど心地良い香りがフワリと鼻腔を掠めた。彰良が好きな、侑斗の優しい匂い。
もしかしたら一人では、不安に駆られ眠れなかったかもしれない。
温かい体温を横に感じて、何処か安心してしまう。目を瞑れば眠気が押し寄せて来て、だんだんと彰良の意識は薄れていった。
