洞窟から出て来て、祭りの喧騒の近くまで戻って来た時のことだ。
人通りから少しだけ離れた草むらで、木を影にして彰良の身体を確認する。悍ましいほどに彰良の身体を覆っていた醜い痣は、いつのまにか親指の爪ほどに小さくなっていた。
「ごめん」
「なにが?」
「その、侑斗にまで呪いが……」
申し訳なさそうな顔をする彰良の前で、侑斗が浴衣の帯を解きペロンと服を捲る。健康的な肢体が露わになり、彰良はギョッとして目を覆った。
「え、なに、ちゃんと見てよ」
今更だが、侑斗は彰良にとんでもなく無防備だ。そろそろと目を覆っていた手を退ける。腰骨のあたりに、確かに彰良と同じ大きさの痣が付いていた。
その様に、心がギュッと痛くなる。顔を暗くした彰良とは対照的に、侑斗は何処かあっけらかんとしていた。
「んー……可愛い恋人とお揃いなのは、結構嬉しいかも」
「こ……!?」
侑斗の台詞に、彰良の顔が赤くなっていくのがわかる。固まって動かない彰良の姿に、侑斗が不思議そうに首を傾げた。
「え? 違うの?」
違くない。違くないが——侑斗の恋人になれるなんて思ってもいなかった彰良にとって、その一言は強烈に過ぎた。
「まさか彰良、俺の身体目当て!?」
「そんなわけないだろ!?」
焦る彰良に、侑斗がケラケラと笑っている。揶揄われたのだと気づいて怒る彰良に、分かってるって、なんて言ってガバリと侑斗が抱きついた。
「ちょ、侑斗……!」
汗で湿った肌が擦れ合って、なんだかすごくドキドキする。いけないことを考えそうになって、咄嗟に侑斗の身体を押し返すも、彰良の力ではびくともしない。
「ねー、でも、身体も目当てだろ?」
好きな人の声が、耳元でそう囁く。とんでもない破壊力に、心臓がバクバクとすごい音で鳴っていた。
ぼんぼりの明かりに照らされて、はだけた着物姿の侑斗が笑いかける。あまりの妖艶さに、彰良はゴクリと唾を飲み込んだ。
誘われるままに、侑斗の身体に手を伸ばす。少しだけふっくらとした胸板に手を乗せる。そのまま首筋を辿って、ツルツルの頬を何度も撫でた。
身体が燃えるように熱い。指の先まで侑斗の中に蕩けていくようだ。
薄い唇に触れれば、誘うように開いて彰良の指を甘く喰む。
もう限界だった。侑斗の首に腕を回して、その顔を引き寄せる。その薄い唇に誘われるままに食い付けば、柔らかい感触に心が震えた。
侑斗をもっと味わいたくて、無意識に舌を出せば、侑斗が少しだけ驚くような気配がする。一拍置いて、侑斗の長く薄い舌が、彰良のそれに絡み付いた。
それに驚いて、びくりと彰良の身体が揺れる。彰良の身体を侑斗の長い腕が逃がさないとばかりに抱き締めてきたから、彰良は本能的に、己の腰を侑斗のソレに押し付けた。
息継ぎもできないほどに舌を絡めあい、必死にお互いの唇を貪りあう。身体が擦れるたびに、気持ちよくて仕方がない。
そうして二人はしばらくの間、お互いを堪能しあっていた。
「彰良って、すっげースケベ」
「うっさい、エロテロリスト」
あそこまでする気、なかったんだけど。そう言い出しそうな侑斗の顔を見ないように背中を向ける。していた時は夢中だったが、思い返して見れば、正直すごく恥ずかしかった。
「下着の中、ぐちゃぐちゃで気持ち悪いから脱いでいい?」
「お前、それ以上エロくなってどうすんの?」
あまりの無防備さに驚いてしまう。侑斗はもっと、えっちなお兄さんである自覚を持って生きて欲しい。浴衣にノーパンで出歩くなど、襲って欲しいと言っているようなものだ。
「俺より彰良の方がエロいと思うけど。えっちな猫ちゃん、みたいな」
「ウケる」
その言葉に鼻で笑ってしまう。彰良のエロさなど、侑斗の醸し出す大人の色気に比べれば大人と子供、月とスッポンなのだ。
いつのまにか、気恥ずかしさも何処かに飛んで、二人並んで笑っていた。
§ § §
日を改めて、二人は起きたことを静弥に報告に向かった。二人の説明を聞いて、静弥は頭を抱えて唸った。
「…………俺は罪悪感を共有しろとは言ったが、呪いまで共有しろとは言ってねぇぞ」
「でももう共有しちゃったので」
あっけらかんとする侑斗に、静弥がスッと身を起こす。何をするのかと見ていると、そのまま勢いよく侑斗の頭にゲンコツを落とした。
「いっっっっってぇ〜!」
彰良を救うためとはいえ、侑斗がしたことはとても危険な行為だ。叱られて当然と言えるだろう。
静弥にコンコンと説教を受ける侑斗の横で、彰良はうんうんと頷いた。
「彰良、お前もだぞ! そんな危険な状態になるまで抱え込みやがって!」
突然矛先を変えられて、彰良の顔が引き攣る。しまったと思った時にはもう遅い。侑斗も大きなたんこぶを抱えて、静弥の言葉に同意するように、うんうんと頷いていた。
「前にも一度行ったが……斑目童子の痣は生涯消えることはない。彰良がまた呪いの鍵になった罪悪感に取り込まれれば、今度は侑斗まで飲み込んで死ぬ」
静弥の言葉に、緊張して身体が強張った。もう、彰良一人の問題ではなくなってしまった。
この先もし、侑斗を巻き込んで呪いが暴走したら——彰良の心が沈みそうになったその時、侑斗が凛と胸を張った。
「大丈夫です」
その眼差しは、彰良を信用している、そう言っているようだった。とくんとくんと、彰良の沈んだ心が動き出す。
そうだ。前を向かなきゃいけない。覚悟を決めて背筋を正す彰良の横で、侑斗が爆弾を投下した。
「彰良はちゃんと、俺に大好きって言えたので」
「ちょっおまっっ!?」
「はあ?」
話のつながりが見えないのだろう。静弥が眉を顰めている。
静弥のおっちゃんの前で、何を言ってくれてんだ。そんな彰良の睨みも虚しく、侑斗は静弥に向かって、はっきりとした声で言い切った。
「だから、彰良の罪悪感の正体。彰良が俺のこと大好きで、言えずに抱え込んでたって」
「侑斗ーー!」
俺の繊細な恋心をネタにしやがって!
侑斗の口を抑えようとして、軽快にかわされる。怒る彰良に笑いながら抱きついて来たから、剥がそうと躍起になって、二人でコロコロと畳を転がった。
「はぁ〜そうなの。青いねえ……」
おじさん、火傷しちゃいそうだよ。そんなことを言いながら、静弥はなんとも言えない顔で笑った。
人通りから少しだけ離れた草むらで、木を影にして彰良の身体を確認する。悍ましいほどに彰良の身体を覆っていた醜い痣は、いつのまにか親指の爪ほどに小さくなっていた。
「ごめん」
「なにが?」
「その、侑斗にまで呪いが……」
申し訳なさそうな顔をする彰良の前で、侑斗が浴衣の帯を解きペロンと服を捲る。健康的な肢体が露わになり、彰良はギョッとして目を覆った。
「え、なに、ちゃんと見てよ」
今更だが、侑斗は彰良にとんでもなく無防備だ。そろそろと目を覆っていた手を退ける。腰骨のあたりに、確かに彰良と同じ大きさの痣が付いていた。
その様に、心がギュッと痛くなる。顔を暗くした彰良とは対照的に、侑斗は何処かあっけらかんとしていた。
「んー……可愛い恋人とお揃いなのは、結構嬉しいかも」
「こ……!?」
侑斗の台詞に、彰良の顔が赤くなっていくのがわかる。固まって動かない彰良の姿に、侑斗が不思議そうに首を傾げた。
「え? 違うの?」
違くない。違くないが——侑斗の恋人になれるなんて思ってもいなかった彰良にとって、その一言は強烈に過ぎた。
「まさか彰良、俺の身体目当て!?」
「そんなわけないだろ!?」
焦る彰良に、侑斗がケラケラと笑っている。揶揄われたのだと気づいて怒る彰良に、分かってるって、なんて言ってガバリと侑斗が抱きついた。
「ちょ、侑斗……!」
汗で湿った肌が擦れ合って、なんだかすごくドキドキする。いけないことを考えそうになって、咄嗟に侑斗の身体を押し返すも、彰良の力ではびくともしない。
「ねー、でも、身体も目当てだろ?」
好きな人の声が、耳元でそう囁く。とんでもない破壊力に、心臓がバクバクとすごい音で鳴っていた。
ぼんぼりの明かりに照らされて、はだけた着物姿の侑斗が笑いかける。あまりの妖艶さに、彰良はゴクリと唾を飲み込んだ。
誘われるままに、侑斗の身体に手を伸ばす。少しだけふっくらとした胸板に手を乗せる。そのまま首筋を辿って、ツルツルの頬を何度も撫でた。
身体が燃えるように熱い。指の先まで侑斗の中に蕩けていくようだ。
薄い唇に触れれば、誘うように開いて彰良の指を甘く喰む。
もう限界だった。侑斗の首に腕を回して、その顔を引き寄せる。その薄い唇に誘われるままに食い付けば、柔らかい感触に心が震えた。
侑斗をもっと味わいたくて、無意識に舌を出せば、侑斗が少しだけ驚くような気配がする。一拍置いて、侑斗の長く薄い舌が、彰良のそれに絡み付いた。
それに驚いて、びくりと彰良の身体が揺れる。彰良の身体を侑斗の長い腕が逃がさないとばかりに抱き締めてきたから、彰良は本能的に、己の腰を侑斗のソレに押し付けた。
息継ぎもできないほどに舌を絡めあい、必死にお互いの唇を貪りあう。身体が擦れるたびに、気持ちよくて仕方がない。
そうして二人はしばらくの間、お互いを堪能しあっていた。
「彰良って、すっげースケベ」
「うっさい、エロテロリスト」
あそこまでする気、なかったんだけど。そう言い出しそうな侑斗の顔を見ないように背中を向ける。していた時は夢中だったが、思い返して見れば、正直すごく恥ずかしかった。
「下着の中、ぐちゃぐちゃで気持ち悪いから脱いでいい?」
「お前、それ以上エロくなってどうすんの?」
あまりの無防備さに驚いてしまう。侑斗はもっと、えっちなお兄さんである自覚を持って生きて欲しい。浴衣にノーパンで出歩くなど、襲って欲しいと言っているようなものだ。
「俺より彰良の方がエロいと思うけど。えっちな猫ちゃん、みたいな」
「ウケる」
その言葉に鼻で笑ってしまう。彰良のエロさなど、侑斗の醸し出す大人の色気に比べれば大人と子供、月とスッポンなのだ。
いつのまにか、気恥ずかしさも何処かに飛んで、二人並んで笑っていた。
§ § §
日を改めて、二人は起きたことを静弥に報告に向かった。二人の説明を聞いて、静弥は頭を抱えて唸った。
「…………俺は罪悪感を共有しろとは言ったが、呪いまで共有しろとは言ってねぇぞ」
「でももう共有しちゃったので」
あっけらかんとする侑斗に、静弥がスッと身を起こす。何をするのかと見ていると、そのまま勢いよく侑斗の頭にゲンコツを落とした。
「いっっっっってぇ〜!」
彰良を救うためとはいえ、侑斗がしたことはとても危険な行為だ。叱られて当然と言えるだろう。
静弥にコンコンと説教を受ける侑斗の横で、彰良はうんうんと頷いた。
「彰良、お前もだぞ! そんな危険な状態になるまで抱え込みやがって!」
突然矛先を変えられて、彰良の顔が引き攣る。しまったと思った時にはもう遅い。侑斗も大きなたんこぶを抱えて、静弥の言葉に同意するように、うんうんと頷いていた。
「前にも一度行ったが……斑目童子の痣は生涯消えることはない。彰良がまた呪いの鍵になった罪悪感に取り込まれれば、今度は侑斗まで飲み込んで死ぬ」
静弥の言葉に、緊張して身体が強張った。もう、彰良一人の問題ではなくなってしまった。
この先もし、侑斗を巻き込んで呪いが暴走したら——彰良の心が沈みそうになったその時、侑斗が凛と胸を張った。
「大丈夫です」
その眼差しは、彰良を信用している、そう言っているようだった。とくんとくんと、彰良の沈んだ心が動き出す。
そうだ。前を向かなきゃいけない。覚悟を決めて背筋を正す彰良の横で、侑斗が爆弾を投下した。
「彰良はちゃんと、俺に大好きって言えたので」
「ちょっおまっっ!?」
「はあ?」
話のつながりが見えないのだろう。静弥が眉を顰めている。
静弥のおっちゃんの前で、何を言ってくれてんだ。そんな彰良の睨みも虚しく、侑斗は静弥に向かって、はっきりとした声で言い切った。
「だから、彰良の罪悪感の正体。彰良が俺のこと大好きで、言えずに抱え込んでたって」
「侑斗ーー!」
俺の繊細な恋心をネタにしやがって!
侑斗の口を抑えようとして、軽快にかわされる。怒る彰良に笑いながら抱きついて来たから、剥がそうと躍起になって、二人でコロコロと畳を転がった。
「はぁ〜そうなの。青いねえ……」
おじさん、火傷しちゃいそうだよ。そんなことを言いながら、静弥はなんとも言えない顔で笑った。
