皇衛の一日~とつきの花嫁スピンオフ~

「はいはーい、崩れたら一からやり直しですよ」

虎渡大将の向かいでひょいひょい軽い調子で腕立て伏せをしている秋月(あきづき)秘書官をちらり。
虎渡大将は筋肉のついた見るからに軍人といった身体つきなのに対し、秋月秘書官はすらりとしていて文官といった感じだ。
けれど、この人がまたバケモノなのだ。

腕立て千回から腹筋千回、うさぎ跳びなどいくつもの基礎体力訓練をさせられ、へとへとになって座り込んでしまった僕たちを秋月秘書官が笑う。

「不甲斐ないですね」

……いや、アンタがおかしいんですが?

心の中でツッコみつつ、声には出さない。

休憩している僕たちを尻目に、虎渡大将と秋月秘書官は木刀で打ち合い始めた。
カン、カン、と木刀がぶつかりあう甲高い音が鳴る。
ふたりはまるで、剣舞でも舞っているかのように美しい。

しかし、虎渡大将と互角にやりあっている秋月秘書官は絶対に、おかしい。
彼は僕と同じ人間のハズなのに、同じ訓練をこなしても平気な顔をしてこうやって虎渡大将と打ち合っている。