皇衛の一日~とつきの花嫁スピンオフ~

朝一で近くの養鶏場から納入される卵で作ったオムレツは、ふわとろで口の中で蕩ける。
炊飯部員も同じ皇衛だが、ヤツらは料理に長けていた。
少し前など洋食のフルコースで一流ホテルのシェフを唸らせたほどだ。

最後にコーヒーを飲んで……そう。
ここでは普通に、食後にコーヒーが出る。
カフェーで飲む特別なものではないのだ。

食事を終え、訓練場へ移動した。

「聞いたか、今日は虎渡(とらと)大将自ら訓練だそうだ」

「げ」

訓練着に着替えながら、憂鬱になった。
いや、皇衛府の頂点に立つ虎渡大将自ら訓練をつけてくださるのはありがたいのだが、……ありがたいのだが体力が保つかが心配だ。

訓練場へ出るとやる気満々の大将が待っていてますます憂鬱になった。

「準備運動のあとは腕立て千回からー!」

……うん。
出だしからすでに、桁をひとつ間違えている。

虎渡大将は自分が鬼だというのを忘れ、我々に訓練を命じがちだ。
鬼の大将には腕立て千回など朝飯前なのだろうが、僕のような人間の皇衛はもちろん、普通の妖の皇衛ですら音を上げる。

しかし虎渡大将の感覚をおかしくしている原因はもうひとつある。