あなたは虹の向こう側

 ーータケルは私の旦那さんになるの!
 
 ナニカ黒く、ドロっとしたものが食道を逆流していくような感覚がして吐き気と共に目を覚ました。
 
 電柱の光を真っ黒な空が侵食している。なぜだかそ
れが自分ごとのように思え、思わずニヤけてしまう。

空は暗いが山肌がオレンジに照らされてきている。

だいたい5時ごろだろう。俺はセットしていたアラームを解除して風呂に潜った。

こんなことをしていると何か大切なことを忘れてしまいそうだ。

でもそれでいい。嫌なことは全て忘れた方が楽だから。今までそうやって逃げてきたのだから…。
 
 

 今日は待ちに待った1学期の終業式だ。重い腰を上げて学校に向かい自分の席に着いた。

「おはよう、タケル。」

「おはよ。」

このむかつくほど優しそうなやつは同級生で、隣の席の駿。

いくらそっけなくしても近づいてくるよくわかんないやつだ。

でもこいつといると…

「駿くん、おはよ〜。勝てるなら声かけてよ〜。」

ほら、説明する必要すらないうるさいのが某ハンバーガーショップのおもちゃのようについてくる。

「華恋はいつも元気だね。その、今日の放課後…」

「お前ら席につけー。朝のホームルーム始まるぞ。」

俺に声をかけてくれるのはこいつらだがだ。

俗に言うぼっちインキャってやつなのかもしてない。

 終業式が終わり、蜘蛛の子のようにバラバラに立って行く奴らの見届け、俺も帰り始める。

黒い雲が空を覆う前に。

 
 夏休みが始まって三日ほどが経ったが、特に変わったことはない。

毎日ここから空を見て、絵を描いたりするだけだ。

普通の人はこんなことしないのだろうが俺は一緒に遊ぶような友達がいないから暇つぶしにはちょうど良かったりする。

空は毎日変わるから見ても描いても全く退屈にならない。そういえば昨日手紙が届いていた。

どうせ親からだろうと思いながら一応見てみる。

「え…?」

一瞬、思考が停止した。そこには行方不明になった幼馴染の名前が書いてあった。