嫁御寮の帰郷

 人家はなく古い墓場しかないと聞いた山道を電動自転車に乗った女性がさっそうと登っていく。墓参りする時期じゃないし、服装も荷物もただの買い物帰りといった風体だ。田舎暮らしというか山暮らしが性に合ってるタイプなんだろうと思う事にした。元々転勤一家で、妻の故郷にIターンした自分が口を挟む権利はない。
 地元の人が女性を本名と一ミリも掠らない通称で呼び、気付かれない範囲で拝むような仕草してはよかったよかったと心から感謝している事に気付いたが、言わぬが花というものだろう。