宮家の当主としての服装ではなく、目立たない地味な着物を着ている。姿勢に紛れても、誰も違和感を覚えないような着物だ。
暁臣は右手で衿を整えた。
左手には、まだ白い包帯が巻かれている。あの夜、素手で札を引き剥がした火傷の跡だった。術による傷は、完治するまで時間がかかる。それを思えば申し訳ないけれど、あの夜、藤乃を無事に送ることができたのは、千歳に自信を与えていた。
「近くまで来たので、寄ってみた」
「……そうでしたか」
暁臣は、ばつが悪そうに咳払いを一つした。彼の様子を見て、千歳は上がるように促した。
入ってきた彼は、中を見回している。きっと、珍しいのだろう。
部屋の中にはちゃぶ台が一つ。このちゃぶ台で、相談者の話を聞く。小さな茶箪笥の上に鏡が置かれているのは、鏡台を兼ねているからだ。
彼からしたら、きっとみすぼらしい部屋だ。だが、千歳が自分の力で掴んだ場所だ。満足している。
「……どうぞ」
手際よく、茶を用意して差し出すと、暁臣は黙ってそれを受け取った。何か言いたいことがありそうだが、口にするのが難しい様子だ。
「……美味いな」
暁臣は右手で衿を整えた。
左手には、まだ白い包帯が巻かれている。あの夜、素手で札を引き剥がした火傷の跡だった。術による傷は、完治するまで時間がかかる。それを思えば申し訳ないけれど、あの夜、藤乃を無事に送ることができたのは、千歳に自信を与えていた。
「近くまで来たので、寄ってみた」
「……そうでしたか」
暁臣は、ばつが悪そうに咳払いを一つした。彼の様子を見て、千歳は上がるように促した。
入ってきた彼は、中を見回している。きっと、珍しいのだろう。
部屋の中にはちゃぶ台が一つ。このちゃぶ台で、相談者の話を聞く。小さな茶箪笥の上に鏡が置かれているのは、鏡台を兼ねているからだ。
彼からしたら、きっとみすぼらしい部屋だ。だが、千歳が自分の力で掴んだ場所だ。満足している。
「……どうぞ」
手際よく、茶を用意して差し出すと、暁臣は黙ってそれを受け取った。何か言いたいことがありそうだが、口にするのが難しい様子だ。
「……美味いな」

