口元に浮かぶのは、柔らかな微笑み。それと同時に、どこか寂しさも見えるようで――けれど、慈愛の表情でもあった。
「ありがとうございました。これで旅立てます」
藤乃は千歳に向けて、深く頭を下げた。それから、暁臣へ視線を移す。
「今度は、聞いてあげてください。大切な人の話なら、なおさら」
その言葉を最後に、藤乃の姿は月光に溶けるように消えていった。
鈴の音も、もう聞こえない。最後まで、恨み言の一つもなかった。それが、かえって胸を重くする。
「藤乃! お前は! お前というやつは! 我が家が復活する大事な機会だったというのに!」
冬近は、なおも喚いていたが、その声はもう誰の耳にも届いていなかった。
「……蘆名冬近。お前を拘束する」
暁臣の言葉に、陰陽師である彼を拘束するのに特別な道具を持って待機していた者達が、冬近を拘束していく。すっかり弱り切っている冬近は、もがいたけれども逃げ出すことはできなかった。
きつく縛り上げられた彼は、そのまま連行されていく。
わめく声が遠ざかっていくのを、千歳はなんともやりきれない気持ちで聞いていた。
「大丈夫か」
「ありがとうございました。これで旅立てます」
藤乃は千歳に向けて、深く頭を下げた。それから、暁臣へ視線を移す。
「今度は、聞いてあげてください。大切な人の話なら、なおさら」
その言葉を最後に、藤乃の姿は月光に溶けるように消えていった。
鈴の音も、もう聞こえない。最後まで、恨み言の一つもなかった。それが、かえって胸を重くする。
「藤乃! お前は! お前というやつは! 我が家が復活する大事な機会だったというのに!」
冬近は、なおも喚いていたが、その声はもう誰の耳にも届いていなかった。
「……蘆名冬近。お前を拘束する」
暁臣の言葉に、陰陽師である彼を拘束するのに特別な道具を持って待機していた者達が、冬近を拘束していく。すっかり弱り切っている冬近は、もがいたけれども逃げ出すことはできなかった。
きつく縛り上げられた彼は、そのまま連行されていく。
わめく声が遠ざかっていくのを、千歳はなんともやりきれない気持ちで聞いていた。
「大丈夫か」

