亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

 千歳は、言いよどんだ。うかつに触れれば、術の反動が触れた者を焼く。
 だが、暁臣は恐れる様子もなく、光に近づいた。そのまま、敷石を手でひっくり返し、その下に隠されていた札を引きはがす。
 彼の左手から、焼けたように煙が上がった。
「愚かな真似を。手が動かなくなるぞ」
 冬近が、暁臣をあざ笑う。だが、暁臣は止まらなかった。
「藤乃を! 二度と、誰かの道具にはさせない!」
 二枚目の札を破ろうとする暁臣の前に、冬近の放った式神が飛ぶ。目の前に立ちふさがろうとする式を、暁臣は一刀のもとに切り捨てた。
 暁臣は苦悶の表情を浮かべながらも、次の札に手を伸ばす。またもや、立ち上る煙と焦げた香り。
(宮様……!)
 千歳は心の中で叫んだが、この場を動くわけにはいかなかった。千歳が巻き込まれれば、藤乃の縁を切れなくなる。
 次の式神も、その次の式神も、暁臣によって切り捨てられた。
 舌打ちした冬近が新たな式神を呼び出そうとした時、三枚目の札が剥がされる。
 札はすべて剥がれたが、冬近自身が唱えた結界はまだ庭を囲ったままだった。中で決着をつけるしかない。