二人きりになった月見の間で、千歳は暁臣に向き直った。
「儀式が終われば、奥方様の縁も、私の縁も切れます」
最初からそう約束していたことを、確かめ直したに過ぎない。
「――そうか」
暁臣の右手が、襟元へ上がり意味もなく衿を整える。
千歳は、その仕草の理由を問わなかった。問えば、自分の中にも同じ落ち着かなさがあることを、認めなければならなくなる気がしたから。
明日は、藤乃を送ると決めた夜。千歳の部屋を暁臣が訪れた。
彼の持つ盆には、白湯の入った湯呑みが二つ載っていた。
「唯子さんにお願いすればよろしかったでしょうに」
「たまには、自分で運んでもいいだろう」
不器用な手つきで湯呑みを畳に置く暁臣を見て、千歳は少しだけ意外に思った。この人が、こんなふうに他人の世話を焼く姿を、まだ見たことがなかったから。
藤乃の手紙を見て以来、彼は少し変わった気がする。
「……明日、ですね」
「儀式が終わったら、どうする?」
千歳に、何気ない様子で暁臣は切り出した。
「縁結社には戻りません」
「儀式が終われば、奥方様の縁も、私の縁も切れます」
最初からそう約束していたことを、確かめ直したに過ぎない。
「――そうか」
暁臣の右手が、襟元へ上がり意味もなく衿を整える。
千歳は、その仕草の理由を問わなかった。問えば、自分の中にも同じ落ち着かなさがあることを、認めなければならなくなる気がしたから。
明日は、藤乃を送ると決めた夜。千歳の部屋を暁臣が訪れた。
彼の持つ盆には、白湯の入った湯呑みが二つ載っていた。
「唯子さんにお願いすればよろしかったでしょうに」
「たまには、自分で運んでもいいだろう」
不器用な手つきで湯呑みを畳に置く暁臣を見て、千歳は少しだけ意外に思った。この人が、こんなふうに他人の世話を焼く姿を、まだ見たことがなかったから。
藤乃の手紙を見て以来、彼は少し変わった気がする。
「……明日、ですね」
「儀式が終わったら、どうする?」
千歳に、何気ない様子で暁臣は切り出した。
「縁結社には戻りません」

