亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

 暁臣も、すっかり身なりを改めていた。幾分寛いだ着流し姿だ。今まで彼のそんなところを見たことがなかったので、どこに目をやったらいいのかわからなくなる。
「どうした?」
「……これを見つけました」
 唯子が隠し持っていたことは言えなかった。
 受け取った手紙を、暁臣は震える手で開く。
千歳は口を挟まず、彼が文面に目を通すのを静かに待っていた。
 やがて、読み終わった彼が、それを千歳の方へと差し出す。読んでもいいのかと目で問いかけたら、うなずくことで返された。

 ――旦那様。
 この文が届く頃、わたくしはもう、家を出ているでしょうか。
 あなたを恨んではおりません。政略の縁と知って嫁いだわたくしに、あなたはいつも礼を尽くしてくださいました。それだけで、十分だと思おうとしておりました。
 ですが、兄が、この縁を家のための楔として使い続けていることに気づいてしまいました。わたくしが久世宮の妻である限り、兄はこの家を利用して蘆名の高めることをやめないでしょう。