やっと絞り出した声は、みっともなく掠れていた。
「田舎を二つ」
暁臣は表情を変えずにそう告げた。
「ありがとうございます」
運ばれてきた椀は、手のひらに余るほど熱かった。蓋を取ると、湯気と一緒に、小豆の甘い匂いが顔にぶつかってくる。添えられた小皿には、塩昆布。
一口すすると、甘さが喉を通って、そのまま冷え切った身体の芯へ落ちていった。指先の震えが、少しずつおさまっていく。
餅は、香ばしく焼かれていた。箸で持ち上げると、どこまでも伸びる。切ろうとしても切れない。
「不器用だな」
「……申し訳ございません」
「責めたわけじゃない」
暁臣は自分の椀に目を落としたまま言った。彼の餅は、器用に切られている。千歳は、難儀しているのに。
千歳は塩昆布をひとつ、口に入れた。しょっぱさが甘さを断ち切って、また甘いものが欲しくなる。止まらないとは、こういうことか。
硝子戸の向こうでは、雨がいっそう激しくなっていた。まだしばらくは、上がりそうにない。
温まったはずの指先が、椀を置いたとたんにまた冷えていくのを、千歳は気づかないふりをした。
◇ ◇ ◇
「田舎を二つ」
暁臣は表情を変えずにそう告げた。
「ありがとうございます」
運ばれてきた椀は、手のひらに余るほど熱かった。蓋を取ると、湯気と一緒に、小豆の甘い匂いが顔にぶつかってくる。添えられた小皿には、塩昆布。
一口すすると、甘さが喉を通って、そのまま冷え切った身体の芯へ落ちていった。指先の震えが、少しずつおさまっていく。
餅は、香ばしく焼かれていた。箸で持ち上げると、どこまでも伸びる。切ろうとしても切れない。
「不器用だな」
「……申し訳ございません」
「責めたわけじゃない」
暁臣は自分の椀に目を落としたまま言った。彼の餅は、器用に切られている。千歳は、難儀しているのに。
千歳は塩昆布をひとつ、口に入れた。しょっぱさが甘さを断ち切って、また甘いものが欲しくなる。止まらないとは、こういうことか。
硝子戸の向こうでは、雨がいっそう激しくなっていた。まだしばらくは、上がりそうにない。
温まったはずの指先が、椀を置いたとたんにまた冷えていくのを、千歳は気づかないふりをした。
◇ ◇ ◇

