亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

「……そんな」
「縁を、断ち切ってはいただけませんか?」
 老女の言葉に、千歳は少し困ってしまった。暁臣から藤乃を祓う依頼を受けている最中だ。他の仕事もできないわけではないが、彼女の家に行かねばならない。
「宮様、先にお戻りください」
「お前は?」
「こちらの方のお宅で、縁を切ってから戻ります」
 聞けば、彼女の家はここからさほど遠くないところにあるという。
 少しより道にはなるが、千歳の見立てでは彼女にまとわりついている縁の糸を切るのはさほど難しくなさそうだった。
 それなのに、暁臣は思ってもみないことを口にした。
「俺も行く」
「……え?」
「俺も行くと言ったんだ。縁をどのように切るのか、知っておいてもいいだろう」
 そう言われてしまうと、千歳には返す言葉もなかった。
 たしかに、千歳が切るのは彼と妻の間に繋がれた縁なのだから。
「狭いところですが、よろしければおいでくださいませ。この機を逃したら、次はいつお願いできるかわかりませんから」