「いや、俺も少し歩きたかっただけだ。特に意味はない」
暁臣と並んで歩くのは、紙問屋に行った時以来だ。彼とこうして歩く回数を重ねたけれど、まだ、彼という人はよくわからない。
現在、彼が亡き妻にどんな感情を持っているのかも。
「……もし、そこのお嬢様。もしかして、糸原家の千歳様では?」
不意に声をかけられて、千歳は足を止めた。声をかけてきたのは、見たことのない老女だった。身につけた着物は粗末なものだが、あちこちに継ぎが当てられ、丁寧に繕われていて清潔感がある。
「ええ、私は、千歳ですが……」
「助けてください、お嬢様」
老女は、縁結社で千歳を見たことがあったそうだ。それで、千歳の力についても知っていると話した。
ちらりと暁臣の方に目を向ける。千歳はここに残って話を聞きたいと思ったけれど、彼はどうするのだろうと思って。
「聞いてやるといい」
「……縁を切りたいのです。悪縁を」
千歳が返事をする前に、暁臣の言葉が終わった瞬間、老女は話し始めた。
「亡くなった夫は借金をしていたのです。家財を売って完済したのに、証文を返してもらえず、利息と称して金を無心し続けてくるのです」
暁臣と並んで歩くのは、紙問屋に行った時以来だ。彼とこうして歩く回数を重ねたけれど、まだ、彼という人はよくわからない。
現在、彼が亡き妻にどんな感情を持っているのかも。
「……もし、そこのお嬢様。もしかして、糸原家の千歳様では?」
不意に声をかけられて、千歳は足を止めた。声をかけてきたのは、見たことのない老女だった。身につけた着物は粗末なものだが、あちこちに継ぎが当てられ、丁寧に繕われていて清潔感がある。
「ええ、私は、千歳ですが……」
「助けてください、お嬢様」
老女は、縁結社で千歳を見たことがあったそうだ。それで、千歳の力についても知っていると話した。
ちらりと暁臣の方に目を向ける。千歳はここに残って話を聞きたいと思ったけれど、彼はどうするのだろうと思って。
「聞いてやるといい」
「……縁を切りたいのです。悪縁を」
千歳が返事をする前に、暁臣の言葉が終わった瞬間、老女は話し始めた。
「亡くなった夫は借金をしていたのです。家財を売って完済したのに、証文を返してもらえず、利息と称して金を無心し続けてくるのです」

