亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

「私の力が不吉かどうかは、宮様がすでにお決めになりました」
 千歳が静かに切り返すと、冬近の扇を持つ手が、わずかに止まった。
「口の減らない女だ」
「必要なことは、何度でも申し上げます」
 冬近は立ち上がり、袴の裾を払った。
「宮様、あまり妙な女に入れ込まれませぬよう。妹への義理も、お忘れなきように」
 その一言に、暁臣の眉が微かに動いた。だが、言い返す言葉を彼が見つけ出すより早く、冬近は踵を返していた。

 冬近が訪れた翌日。千歳は藤乃の友人に話を聞くために外出していた。彼女達の中に、藤乃からの手紙を受け取った人がいるのではないかと思ったのだ。
「……今、帰りか」
「宮様。まあ、偶然ですね」
 有力な手掛かりが見つからなかったことにがっかりしながら戻ってきたら、自動車の窓から顔を出した暁臣に声をかけられた。
「今日は何か見つかったか?」
「……いいえ」
 あと三十日。それまでに手掛かりが見つからなければ、藤乃は悪霊になる。残された日はそう多くないのに、手掛かりはまったく見つからない。少ししょんぼりとしながら返したら、彼は自動車から降りてきた。
「宮様、どうかなさいましたか?」