亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

 千歳は鏡台の前に膝をつき、抽斗を一段ずつ確認していく。白粉や紅の小さな器、使われなくなったまま並んだ櫛。藤乃の性格を示しているように、それらはきちんと整理されていた。
 今度は、文机の方に向かう。机の上に整然と並べられた筆記用具。しばらく誰も使っていないから、筆も硯もからりと乾いている。
 文机の引き出しを開いてみる。そこには、便箋と封筒が入っていた。便箋が数枚しか残っていないのに、封筒の方は残っている。用意したのはいいものの、書き損じた便箋を焼き捨てて、封筒の方は使われなかったということか。
(……違うわ)
 千歳は封筒を数えた。四枚。五枚一組で売られている品だ。一枚だけ、使われている。
 書き上げた文が一通、どこかにある。屋敷をほとんど出なかった藤乃が託せる相手は、限られている。
(……ここをこれ以上調べても、無駄かしら)
 引き出しを戻そうとし、何かかさかさという音が聞こえた気がした。
「どうした?」
 問いかける暁臣にはかまわず、引き出しを全部抜いてしまう。奥をのぞき込めば、奥に何か白いものが見えた。
 手を差し込んで、引き出してみると、ばらばらになった便箋の切れ端だった。