逃げ出たこともあったが、どこに逃げても掴まってしまう。そんな彼女が千歳の元に依頼に来たのは先週のことだった。
彼女は幾度も頭を下げると、千歳に封筒を差し出した。
千歳が受け取るのは、一律三円。それ以上は受け取らないと決めている。彼女のような身の上ならば、その三円を用意するのも困難なはず。
千歳と彼女が外に出た時には、迎えの者が来ていた。彼女が無事に長屋を離れるのを確認してから、千歳も自宅へと戻る。
千歳が暮らすのは、通称縁結社と呼ばれる神社だ。特に良縁を結ぶ御利益があると、祈祷を願う者は多い。実際、妹は縁を結ぶ術に長けていた。
家の主である父は、井戸の側で木刀を振っていた。身体を鍛えるのにいいと、毎朝こうして木刀を振るのが日課だ。
千歳を見るなり、父はしかめっ面を向けた。
「遅い」
「申し訳ございません。悪縁の根が深く、思ったより手間取りました」
「言い訳はいい。いくらもらった?」
「既定の金額でございます」
父の眉間に刻まれた皺が深くなる。
「あの女なら、もう少し出しただろうに」
彼女は幾度も頭を下げると、千歳に封筒を差し出した。
千歳が受け取るのは、一律三円。それ以上は受け取らないと決めている。彼女のような身の上ならば、その三円を用意するのも困難なはず。
千歳と彼女が外に出た時には、迎えの者が来ていた。彼女が無事に長屋を離れるのを確認してから、千歳も自宅へと戻る。
千歳が暮らすのは、通称縁結社と呼ばれる神社だ。特に良縁を結ぶ御利益があると、祈祷を願う者は多い。実際、妹は縁を結ぶ術に長けていた。
家の主である父は、井戸の側で木刀を振っていた。身体を鍛えるのにいいと、毎朝こうして木刀を振るのが日課だ。
千歳を見るなり、父はしかめっ面を向けた。
「遅い」
「申し訳ございません。悪縁の根が深く、思ったより手間取りました」
「言い訳はいい。いくらもらった?」
「既定の金額でございます」
父の眉間に刻まれた皺が深くなる。
「あの女なら、もう少し出しただろうに」

