藤乃の件もあり、陰陽師がこの屋敷に出入りする機会は多かった。だが、優れた能力を持つ陰陽寮の陰陽師達が原因を見つけ出せなかったのであれば、ひとまず後回しにしておくほうがよさそうだ。
「それと、奥方様は、幾度も文をお書きになっていたそうです。誰かに宛てて」
「初耳だ。藤乃は、そんなことは言わなかった」
彼の表情に嘘はなかった。本当に、何も知らないようだ。
「言わなかったのではなく、宮様が聞かなかったのではありませんか?」
そう問いかけると、暁臣の顔つきが変わった。筆を持つ手が止まる。こちらを睨みつける彼の視線は、鋭いものだった。
「言葉が過ぎるぞ」
「事実かどうか確認しただけです」
彼のその視線に負けないようにと、千歳も真っすぐに彼の目を見つめ返す。不機嫌そうに、暁臣の口元が歪んだ。
「藤乃は、俺に不満を漏らしたことなど一度もない」
「不満を漏らさなかったことと、不満がなかったことは、同じではありません」
それは、千歳自身の経験だった。
糸原家で千歳が自分自身の扱いについて不満を口にしたことはない。
「それと、奥方様は、幾度も文をお書きになっていたそうです。誰かに宛てて」
「初耳だ。藤乃は、そんなことは言わなかった」
彼の表情に嘘はなかった。本当に、何も知らないようだ。
「言わなかったのではなく、宮様が聞かなかったのではありませんか?」
そう問いかけると、暁臣の顔つきが変わった。筆を持つ手が止まる。こちらを睨みつける彼の視線は、鋭いものだった。
「言葉が過ぎるぞ」
「事実かどうか確認しただけです」
彼のその視線に負けないようにと、千歳も真っすぐに彼の目を見つめ返す。不機嫌そうに、暁臣の口元が歪んだ。
「藤乃は、俺に不満を漏らしたことなど一度もない」
「不満を漏らさなかったことと、不満がなかったことは、同じではありません」
それは、千歳自身の経験だった。
糸原家で千歳が自分自身の扱いについて不満を口にしたことはない。

