亡き奥方を離縁するため、私は契約妻になりました

 帝都を守る結界に霊力を注ぐ名門蘆名家の出身。帝都を守る役目を負った蘆名家をより強く皇族に結びつけるための縁談だった。
 政略で娶った妻に、暁臣は夫婦としての礼儀は欠かさなかった。それで十分だと思っていた。
 生前の彼女も、何か言いかけては、俯き、袖の陰へ顔を隠した。暁臣はそれを、控えめな彼女の癖のようなものだと思っていた。
(俺は、彼女の言葉を、一度でもまともに聞いたことがあっただろうか)
 政務に追われ、屋敷のことは家令に任せきりだった。藤乃が何を望み、何に沈んでいたか、暁臣はほとんど知らない。知ろうとしなかった、と言った方が近い。
 陰陽寮に相談しても、やってきた陰陽師は霊を祓おうと試みるか、封じの札を重ねるだけ。彼らが幾度訪れても、藤乃を去らせることはできなかった。
 陰陽寮が出した結論は、根本を断つ手立てはないというものだった。婚姻の縁ごと断ち切れる者でなければ、彼女を去らせることはできない、と。
 陰陽師達は口にするのも嫌がったけれど、最終的に教えられたのが縁結社にいる断ち手のことだった。